第2回目はこのシリーズでは、世界中で異なった姿を見せるシャルドネの風味について記載します。
地域の気候や発酵・熟成の有無によって変わる風味について深堀りします。
今回はあわせてフランスの代表的な地域のシャルドネワインについて紐解きます。
シャルドネワインの選び方の参考にして下さい。
シリーズ① 「シャルドネのイメージ」
・・・今回○シャルドネの生誕地・素顔は?
〇「白ワインの女王」は個性がない?
○たくましいシャルドネ
○「女優のような」シャルドネ
○シャルドネの親はピノ・ノワール、兄弟はガメイ
シリーズ② 「世界中で異なった姿を見せるシャルドネ、フランスは?」
○風味は地域でこんなに変わるシャルドネ
〇樽やステンレスによる発酵・熟成でどう変わる?
〇フランス
・ブルゴーニュ地方
・コート・ドール
・シャブリ
・マコネ
・シャンパーニュ
シリーズ③ 「カリフォルニア、オーストリアのシャルドネの姿と風味は?」
〇カリフォルニア
〇オーストラリア
○ワイン検定(ブロンズ)記載内容
シリーズ④ 「イタリア・チリ・日本のシャルドネの姿と風味は?」
〇イタリア
〇チリ
〇日本
〇料理とのマッチング
風味は地域でこんなに変わるシャルドネ
具体的に栽培地の気候によって、風味はどのように変わるのでしょうか。
一般には以下のような変化です。
・冷涼な地域:林檎や梨など青い果実や柑橘の香りとすっきりとした酸を備える
・温和な地域:白桃やメロンなどストーンフルーツ
・温暖な地域:バナナやパイナップルといった熟したトロピカルフルーツ
このように栽培された地域の気候が、収穫時のブドウの熟度に影響を与え、レモンや青リンゴからパイナップルやイチジクまで、様々な風味が感じさせます。
さらに、醸造の方法によっても風味は変わってきます。
どのように変わるのでしょうか?
樽やステンレスによる発酵・熟成でどう変わる?
醸造の方法の中で風味に大きく影響を与えるのは、熟成とマロラクテイック発酵です。
まず、熟成についてですが、熟成をあまりしないシャルドネは、ミネラリーでドライな味わいになります。
冷涼な産地では熟成をあまりしないことが多く、ソーヴィニヨン・ブランなどの辛口スタイルに近い風味になりますが、ソーヴィニヨン・ブランにみられるような「青い草の香りが少ない」風味です。
そして、熟成を行うことでワインの香りは複雑さを持つようになります。
熟成には樽を使う方法とステンレスタンクを使う方法があります。
樽熟成を行うと、ナッツやバター、バニラの香りが現れ、リッチでコクのある風味になります。
一方でステンレスタンクでの醸造・熟成では、シャープでスッキリとした風味が保たれます。
次に、マロラクテイック発酵です。マロラクティック発酵(MLF)をすると、乳酸菌の働きによってリンゴ酸が乳酸へと変化し、酸味がまろやかになり、バターやチーズ、ヘーゼルナッツのような香りがプラスされ滑らかな質感になります。また香りに複雑さが加わります。
シャルドネの主な生産国はアメリカ合衆国、フランス、オーストラリア、イタリア、チリですが、それぞれの地域の違いを見てみましょう。
まずは、代表的な産地であるフランスから。
フランス・ブルゴーニュ地方
シャルドネの聖地とも言われているブルゴーニュ地方。シャルドネはボージョレ地区を除くブルゴーニュ地方において栽培比率51%をも占める最も重要な白ブドウ品種です。
ブルゴーニュ地方では最北部のシャブリや中部のマコネを筆頭に各地域で栽培されています。
シャブリやモンラッシェといった、世界的に有名な繊細・上品な辛口白ワインからフレッシュなタイプまで、造り手によってスタイルはさまざまですが、この地で造られるシャルドネのワインに共通するのは、ブルゴーニュ地方の冷涼な気候がもたらすエレガントな酸です。
コート・ドール
心臓部であり原産地でもあるコート・ドールは、コート・ド・ニュイ地区とコート・ド・ボーヌ地区を合わせた地域ですが、世界で最も高価でワイン愛好家垂涎のワインを生み出す、まさに「黄金の丘(Cote d’Or)」です。
豊かな果実味と厳しい酸味のメリハリのある引き締まった味わい。特級畑や1級畑のシャルドネは、ストーンフルーツの香りに樽由来のクリーミーな風味が調和し甘美です。複雑で熟成を経た華やかでエレガント、長く続く余韻のワインがひしめいています。ムルソーやモンラッシェなどが代表的な銘醸地です。
小規模なドメーヌのため生産量が少ない一方で、高い需要のため人気なワインは入手が困難なほどです。
シャブリ
ブルゴーニュ北部にあるシャブリ地区のシャルドネで造られるワインは、充実したミネラル感、シャープで鋼鉄のような酸味の高いワインです。
この地域の土壌は、約1億5千万千前に堆積した牡蠣の貝殻の化石が多く含まれている石灰質で、キンメリジャン土壌と呼ばれます。この土壌が大変ミネラリーで酸が効いた爽やかな風味と火打石のような鉱物の香りをワインに与えています。
爽やかで酸味を重んじるため、オークはあまり使わず、レモンなどの柑橘系の香りのキリリとした極辛口スタイルに仕上げています。
マコネ
シャルドネの原産地ともいわれ「シャルドネの故郷」であるこの地域は、栽培面積の80%がシャルドネで、ブルゴーニュで造られる白ワインの約3分1の生産量をも占めています。
石灰質の火打石の破片シャイユが入り混じった土壌が、シャルドネの栽培に非常に適していて、この地区の温暖な気候も影響し、コート・ドールで造られる白ワインに比べてより果実味豊かでボリューム感のあるワインになります。比較的気軽に楽しめる、おおらかで親しみやすいスタイルです。
また、近年、プイィ・フュイッセの22のクリマ(畑)がプルミエ・クリュへ昇格し、果実味豊かながらもエレガントな味わいのワインを造り出しています。
シャンパーニュ
シャンパーニュは主にシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの3種類ブドウのいずれかのワインを組み合わせて、二次発酵させて造られますが、シャルドネだけを使用し造る「ブラン・ド・ブラン」もあります。
例えばサロン(写真)などは、シャルドネ100%から造られる極上のシャンパーニュです。
シャルドネは、主にコート・デ・ブラン地区とコート・デ・セザンヌ地区で栽培され、シャンパーニュに繊細さと新鮮さを与え、長期熟成をも可能にさせています。