横浜の港北ニュータウンの散歩道で見られる紫陽花の数々を2回にわたり紹介します。合わせて紫陽花についての様々な雑学知識や蘊蓄(うんちく)をコラムで紹介しています。
第一回に登場するのはガクアジサイやヤマアジサイ。様々な色やタイプの違う装飾花を写真で紹介します。(第二回目はホンアジサイを始めとしたさまざまなタイプの紹介です。)
6月に入り、港北ニュータウン内の庭先や散歩道には紫陽花がこの時を待っていたとばかりに咲き乱れています。
これからの雨の多い時期に、色とりどりの紫陽花(あじさい)はよく映えます。
色も形もとても多様で風景に溶け込んでいる姿には飽きることなく見入ってしまいます。一緒にご覧ください!
【コラム1】紫陽花は大きく分けて5種類
紫陽花の品種は2000種以上ありますが、大きく5種類に分類できます。
①ガクアジサイ(額紫陽花)
②ヤマアジサイ(山紫陽花)
③ホンアジサイ(本紫陽花)
④セイヨウアジサイ(西洋紫陽花)
⑤アメリカノリノキ
よく見ると同じ紫陽花でも花のつき方や色が違います。
手まりのようなピンクの花。目に飛び込んで来るピンクは鮮やか!
【コラム2】ホンアジサイとは
広く紫陽花としてイメージされているのは、このホンアジサイです。ホンアジサイは、ガクアジサイを園芸用に品種改良して作られたものです。
ホンアジサイは、小花がこんもりと密集して、花房は球状のテマリのような形をしています。「手まり咲き」とも呼ばれます。
小さな花が重なるように咲いている紫のアジサイ。混ざり気のない紫はとても純粋さを感じさせます。
【コラム3】アジサイの色と色の移り変わり
花の色は、青、紫、赤、ピンク、白、緑などがあります。
紫陽花の飾り花は、時間とともに色が移り変わっていきます。最初は緑色をしていますが、徐々に白色に変化し、その後青かピンクに、最後に緑色になります。
花の奥に蕾が固まってあり、蕾をピンクの花が取り囲んでいます。これも八重咲きの花です。すこし違うアジサイ?と感じるのは花弁(ガクの一枚一枚)が細長い楕円の形のせいでしょうか・・・。
【コラム4】咲き方は主に3通り
紫陽花の咲き方は、「テマリ咲き」「ガク咲き」「八重咲き」の3通りあります。装飾花であるガクのつき方で分類されます。
・「テマリ咲き」は装飾花(ガク)が手まりのように半球状に咲いている紫陽花のことです。
・「ガク咲き」は両性花(蕾)の周りをガクがまるで額縁のように装飾花が囲んで咲いています。
・「八重咲き」は装飾花が重なるようについており、1つひとつの塊にボリュームがあります。「ピラミッド咲き」と呼ぶこともあります。
白い4枚花弁の装飾花が咲き、真ん中にはブルーの小さな5枚花をもつアジサイがあります。
装飾花はお互いに干渉することなく気ままに咲いています。
【コラム5】紫陽花の花に見えるのは実はガク
紫陽花の花のように見える部分は、実は花ではなく「ガク」です。“花びらのようなもの”は色がつくため「装飾花」ともよばれています。ガク片が変化したものです。そして、紫陽花の本当の花は、ガクの内側に咲いています。
この2つの花は、装飾花と真花(しんか/両性花)と呼ばれています。真花は中心部分に密集した小さな花です。
装飾花(ガク)は花粉を運ぶ昆虫を引き寄せるために発達したと言われていて、ガク片なので通常は種が育ちません。
一方で、真花は両性花なのでガク、雄しべ、雌しべ、花弁がそろっています。
散歩していると様々な風景に出会います。
住宅街を縫っている散歩道でのアジサイ。 ピンクの花に紫の蕾のアジサイと白のアメリカノリキリです。アメリカノリキリは装飾花がとても小さく密集してますね。
【コラム6】装飾花の真ん中にあるのは何?
装飾花(ガク)の真ん中にあるぽちっとした丸いものは何なのでしょう?(先の写真の4枚の白い花の中心です)
これも花ですが、咲いたり咲かなかったりします。雄しべも雌しべも退化しているので、多くは中性花となっています。
公園脇には、同じピンクの花に紫の蕾のアジサイと白の花に黄みの蕾のアジサイ。円盤状のUFOが留まっているかのようです。
【コラム7】ガクアジサイとは
ガクアジサイは日本古来の紫陽花で、現在見かける様々な種類の紫陽花の原種です。伊豆半島や三浦半島、伊豆諸島に多く、海岸沿いで自生することから「ハマアジサイ」とも呼ばれます。
中央に複数の小さな粒のような両性花(雄しべと雌しべを持つ)が咲き、その周りをガク(花びらの外側にある花葉)が発達した飾り花(装飾花)が囲みます。他の種類に比べると飾り花や葉が大きく、葉に光沢があるのが特徴です。
また、奥まった住宅街の曲りくねった小道に咲くアジサイは、白色の花(装飾花)が青色の蕾の周辺にある「ガクアジサイ」。 ピンクの花のガクアジサイより清楚に感じます。
【コラム8】アジサイの別名
アジサイ(ユキノシタ)科アジサイ属の植物で、原産国は日本、中国、台湾、北アメリカなどです。学名や英名は「Hydrangea」であり、「紫陽花(アジサイ)」は和名です。「七変化(シチヘンゲ)」「八仙花(ハッセンカ)」などの別名もあります。
花が長く咲き、青色、藍色、紫色、淡紅へと、いつの間にか色を変えることから、「七変化」あるいは「八仙花」とも呼ばれています。
また、同じ白い花(装飾花)に薄い青(真花)のアジサイでも、よく見ると先のアジサイとは花(装飾花)の形がより細長く先端が尖っていて違います。葉の厚さも違います。ヤマアジサイのように見えます。ガクアジサイとヤマアジサイの違いはよく見ないとわかりにくいですね。
【コラム9】ヤマアジサイとは
ヤマアジサイは、関東地方以西の太平洋側、四国、九州の山地の湿った林内に生えてきた品種で、日本で古くから自生する紫陽花です。
ガクアジサイと同様にガク咲きで、花序の大きさはガクアジサイと同じですが、装飾花は小さく可憐で、葉は薄くて小型、茎も細く、全体的に小ぶりで清楚な印象を受けます。
花の色が変化し、時間の経過とともに土壌の性質によっても色が変わります。
さらに、少し歩くと家の脇には同じ白の花(ガク)でも八重咲、しかも蕾は薄緑でまだ花をつけていないガクアジサイ。薄緑の蕾のアジサイは初々しい印象です。
【コラム10】「ガクアジサイ」と「ヤマアジサイ」の見分け方は
海岸に多いガクアジサイは花も葉も大形ですが、山中のヤマアジサイは小ぶりで葉が細長い。その他、
・ガクアジサイは、うぶ毛が少ない
・ヤマアジサイは、うぶ毛が多い
・ガクアジサイは、葉が厚めでやや光沢がある
・ヤマアジサイは、葉が薄めで、光沢がない
の違いがあります。
公園の片隅には白の花のアジサイとピンクのアジサイが仲良く、可憐に咲いていました。並んで咲く姿は、微笑ましいです。
【コラム11】土の酸性・アルカリ度が色を変える。
紫陽花の花の色は、土壌の酸性度によって変化します。というのは、紫陽花は根から栄養を吸収しますが、土壌のph値によって花の色が変化するのです。土壌が酸性(~pH5)であれば青色に咲き、アルカリ性(pH6~)であればピンク色に咲きます。
紫陽花の色はもともとピンクですが、酸性の土壌に含まれるアルミニウムと、紫陽花がもつアントシアニンが反応すると青になる仕組みです。
土壌が弱酸性の日本では、青い色の紫陽花が多いです。紫陽花の根は、酸性に溶けやすいアルミニウムを吸収します。アルミニウムを吸収することでpHは酸性に傾き、青色の花が咲くのです。
コラムの目次
【コラム1】紫陽花は大きく分けて5種類
【コラム2】ホンアジサイとは
【コラム3】アジサイの色と色の移り変わり
【コラム4】咲き方は主に3通り
【コラム5】紫陽花の花に見えるのは実はガク
【コラム6】装飾花の真ん中にあるのは何?
【コラム7】ガクアジサイとは
【コラム8】アジサイの別名
【コラム9】ヤマアジサイとは
【コラム10】ガクアジサイとヤマアジサイの見分け方は
【コラム11】土の酸性・アルカリ度が色を変える。
【コラム12】青又はピンクの花を咲かせる方法は?
コラムの目次
【コラム13】アジサイの花言葉
【コラム14】「アジサイ」との読み方となった由来
【コラム15】「紫陽花」と漢字で書かれる理由
【コラム16】アジサイは金属集積植物
【コラム17】「コンペイトウ」
【コラム18】アジサイとシーボルト
【コラム19】「テマリテマリ」
【コラム20】牧野富太郎博士・長崎市の花
【コラム21】紫陽花を使ったおまじない。お守りにも使われる理由とは?
【コラム22】アジサイは人気のない花だった。
【コラム23】アジサイの名所が「お寺」の理由は?
【コラム24】カシワバアジサイ