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カバ(CAVA)・・・スパークリングワイン・シリーズ⑪

 プロセッコ、シャンパンに次ぐ販売本数を誇り、世界3大スパークリングワインの一つと言われるカバを取り上げます。生産地、味わい、ブドウ品種、ワインの種類、歴史、主な生産者などを述べます。

カバとは

 カバはシャンパーニュと同じ伝統的製法で造られるスペイン産のスパークリングワインです。カタルーニャ州固有のブドウ品種を中心に造られており、固有品種に由来する焼けたゴムや土のような個性的なアロマがあります。

 また、シャンパーニュと比べると比較的酸味が穏やかなため、飲みやすい味わいに仕上がります。そのカジュアルで親しみやすい味わいのため、プロセッコ、シャンパンに次ぐ販売本数を誇っていて、世界3大スパークリングワインの一つと呼ばれています。

 カバ(Cava)という印象的な名前は、カタルーニャ語で「セラー」を意味し、ワインを熟成させる “洞窟”や“地下蔵” を意味します。

カバ産地

カバの生産地

 カバの生産地は、もともとカバの規則が地理的産地ではなく製法を定めたものだったため、カタルーニャをはじめとしてなど、気候や風土の違う多様な地域に3万ha以上の畑が拡がっています。
 原産地呼称制度上ではD.O.カヴァは生産地が特定の地区に限定されておらず、アラゴン州、ナバーラ州、ラ・リオハ州、バスク州、バレンシア州、エクストレマドゥーラ州の6州まで、160の自治体に広がります。
 そして、これらの地域は以下の4つのゾーンに大きく分けることができます。

コムタッツ・デ・バルセロナComtats de Barcelona
 バルセロナを取り囲むうように位置するカバの主要産地です。
地中海性気候ですが、内陸に入っていくと大陸性気候寄りになります。
中程度の標高の山脈の間の渓谷から、平地まで、地理的条件は様々で、ブドウも多様です。
海沿いにはミネラル豊富なタイプも多く見られます。

バリェ・デル・エブロValle del Ebro
 冬は寒く、夏は暑く乾燥している、大陸性気候です。
果実味豊かで長期熟成が可能なタイプになります。

ビニェドス・デ・アルメンドラレッホ(Viñedos de Almendralejo)
 標高200〜450mと平地に近い産地です。
雨は少なくかなり乾燥していて、夏はソラノ(Solano)と呼ばれる温暖な風の影響を受け高温です。
冬は穏やかです。

・レバンテLevante
 バレンシア州の内陸部、標高600~900m程の台地の産地です。
内陸性気候で、乾燥し、トロピカルなタイプが造られています。

 この中で、上記のコムタッツ・デ・バルセロナであるペネデス(Penedès)のエリアで95%が作られ、ペネデスの中でもサン・サドゥルニ・ダノイア(Sant Sadurní d’Anoia)という村が中心地でカバの85%が造られています。

カバの4つのゾーン
カバの4つのゾーン
ペネデス
ペネデス

味わいの特徴

 カタルーニャ固有のブドウ品種を使用することによって、以下のような特徴を持っています。

酸味が穏やかで飲みやすい
 カバにはシャルドネやピノ・ノワールを使うこともできますが、主体はカタルーニャ固有のブドウ品種です。これらは、比較的酸味の穏やかな品種が多いため、シャンパンと比べると酸味が穏やかです。

個性的なアロマ
 固有品種に由来する、焼けたゴムや土のようなアロマもカバの特徴です。この香りは好き嫌いが分かれます。

辛口が多い
シャンパーニュ地方と比較すると、温暖な気候のため果実の成熟度が高く、近年では糖分を添加しない極辛口のブリュット・ナチューレが多くなっています。

歴史

 カバが初めて製品として造られたのは1872年。シャンパーニュ地方でスパークリングワインの造り方を学んできた、コドーニュ一族のホセ・ラベントス氏が、シャンパンと同じ伝統的製法(瓶内二次発酵方式)でカバを造りました。
 その後1880年代にフィロキセラ禍によって、カタルーニャでは赤ワイン用の黒ブドウが壊滅します。これをきっかけに、カバ用の白ブドウに植え替えられたことで、カバ産業は大きく発展をとげました。
 1959年になると、「カバ」と名乗るための規則が法律により定められます。しかし、当時製法についての制限はなく、伝統的製法以外のあらゆる製法が認められていました。
 カバの製法が現在のものに定められたのは、それからさらに11年後の1970年。ようやく、伝統的製法である瓶内二次発酵方式だけに制限されました。

 なお、ペネデスの生産者たちの中には、DOカバを名乗れる産地が1ヶ所ではないことに疑問をもった人たちがいました。2019年に9つのDOペネデスの有力な生産者(※)がDOカバを脱退、新組織AVECに移りました。この生産者たちが生産するスパークリングワインはカバを名乗らず「コルピナットCorpinnat)」と表示されます。ペネデスのブドウを使って製造したものになります(※Gramona、Llopart、Nadal、Recaredo、Sabaté i Coca、Torelló、Huguet-Can Freixes、Júlia Bernat、Mas Candí)

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ブドウ品種

カバの品種は以下の白ブドウ5種、黒ブドウ4種の9品種が認められています。
白ブドウ
チャレッロ(Xarel·lo)
マカベオ(Macabeo、リオハ:Viura)
パレリャーダ(Parellada)
シャルドネ(chardonnay)
スビラ・パレン(Subirat Parent、Malvasía / Malvasía Riojana)

黒ブドウ

ガルナッチャ(Garnacha Tinta、Grenache)
モナストレル(Monastrell、Mourvèdre / Mataró)
トレパ(Trepat)
ピノ・ノワール(pinot noir)

この中でも、主要な品種がチャレッロ、マカベオ、パレリャーダの3種です。

チャレッロ
 カバに使われる固有品種の中で、最も高品質と考えられている白ブドウです。
チャレッロから造られるワインは力強くフルボディ。多くの生産者がチャレッロ100%のキュヴェを造っています。
 また、過熟すると土の香りをもち、それがカバ特有のアロマの原因の一つだと考えられています。
 近年、ポリフェノールの一種である抗酸化物質レスベラトロールを、非常に多く含有していることが判明しました。

マカベオ
 スペインで、アイレンに次いで2番目の栽培面積を持つ白ワイン用ブドウ品種です。リオハではヴィウラ、フランス・ラングドックではマカブーと呼ばれています。
萌芽が遅く霜害を受けにくいため、カタルーニャでは標高の低い畑に植えられることが多いブドウです。
 酸味が強く、花やハーブに例えられる華やかで軽い香りが特徴です。白ワインにしては珍しいほどの長期熟成に耐える品種です。

・パレリャーダ
 比較的低アルコールアロマティックでデリケートなワインを造る白ブドウです。その特徴から、スパークリングワイン以外のに甘口ワインにも使用されています。 萌芽が早く霜害に合いやすいため、カタルーニャでは標高の高いところで栽培されますが、ブドウの成熟はとても遅く収穫は最後にされます。

マカベオ

カバの種類

 カバには以下の種類があり、それぞれのタイプに熟成期間や甘辛度、製法などが定められています。

●カバ・デ・グアルダ(Cava de GUarda)
〇ノン・ヴィンテージ
 最もスタンダードなカバ最低9ヶ月の瓶内熟成が必要です。

ヴィンテージ
 単一年のブドウで造られたカバ。シャンパンと違い、ノン・ヴィンテージと同じ最低9ヶ月の瓶内熟成が認められています。

●カバ・デ・グアルダ・スペリオール(Cava de GUarda Superior )
 甘辛度は、ブリュット・ナチューレ、エクストラ・ブリュット、ブリュットの辛口のみとなっています。
 また、2025年までにオーガニック栽培のブドウを100%使用する事が必須条件です。

リゼルヴァ(Reserva)
 ワンランク上のカバ。最低18ヶ月の瓶内熟成が必要です。 

グラン・リゼルヴァ(Gran Reserva)
 2017年までカバの最上ランクでした。最低30ヶ月の瓶内熟成が必要です。

カバ・デ・パラヘ・カリフィカード(Cava de Paraje Calificado)
 Paraje Calificadoは「認定された土地」の意味で、2017年に新たに発表されました。グラン・クリュに相当するカバの単一畑で、 最低36ヶ月の瓶内熟成が必要です。2022年現在6社10銘柄の認定だそうです。
 厳しい規定をクリアした、わずか12の畑がパラヘ・カリフィカードを名乗ることを認められています。

ロゼ
 上述の全てのカバに、ロゼが認められています。 ロゼはシャンパーニュと違い、白ワインに赤ワインをブレンドする製法が禁止されており、赤ワインのようにブドウ果皮を漬け込んで色を抽出するセニエ法のみが認められています。

 DOカバの規定は2021年に改訂され、2022年から新規則が適用されていますが、DOカバの新規定ですが、先に述べた「地域(Zona)」の考え方の導入と、熟成期間による「等級カテゴリー」を設定したことが大きな変化点です。等級ごとに以下のラベルが貼られます。
 

カバのシール

カバの甘辛度

 ラベル表記の甘辛度は、下記表の残糖分の規定があります。
Brut Nature(ブリュット・ナチューレ):~3g/l未満、糖分無添加です。
Extra Brut(エクストラ・ブリュット):~6g/l未満
Brut(ブリュット):~12g/l未満
Extra Seco(エクストラ・セコ):12~17g/l未満
Seco(セコ):17~32g/l未満
Semi Seco(セミ・セコ):32~50g/l未満
Dolce(ドゥルセ):50g/l以上

主な生産者

フレシネ(Freixenet)
 スタイリッシュな黒いラベルでおなじみのフレシネは、カバの全生産量の大部分を占めるワインを造り、世界中に輸出している巨大企業です。一方で、安易にシャルドネやピノ・ノワールといったフランス品種を使用することに反対し、カタルーニャ独自のブドウ品種だけで高品質なスパークリングワイン造りを目指している生産者です。
 名実ともに近代カバの技術発展に大きく貢献した、リーディングカンパニーと言えます。カバ・デ・パラヘ・カリフィカードを一つ所有しています。

レカレド(Recaredo)
 レカレドはフレシネと対照的でブルゴーニュのドメーヌ的な生産者で全て自社畑のブドウで生産しています。
さらに、有機栽培のビオディナミ農法をカバ生産者の中で最も早く導入。辛口にこだわり全てのカバを糖分無添加のブリュット・ナチューレで仕上げるなど、品質を追及しています。
 ただ日本では流通が限定的であまり見かけることのない生産者です。
畑の所有面積は少ないものの、カバ・デ・パラヘ・カリフィカードを2つ所有しています。

フレシナのカバ

クロ・モンブラン(Clos Montblanc)
 クロ・モンブランは「誰でも手を伸ばせて、しかもとびきり美味しいワインを」という信念のもとに美味しいぶどうエキスだけをワインに溶け込ませる醸造法でワインを造っています。カタルーニャの多くの星付きレストランで提供されているにも関わらず、手頃な値段です。

コドルニウ(Codorníu)
 フレシネと並んでカバの2大巨頭でサン・サドゥルニ・ダノイアにあります。1551年創業、スペイン最古のワインメーカーです。
 1872年、コドルニウ一族のホセ・ラベントス氏が、フランスのシャンパーニュ地方で学んだ技術と醸造機器を持ち帰り、スペインの伝統品種を用いて初めてカバの製造に成功しました。
 ヨーロッパ最大規模3,000haの自社畑と創業一族所有のブドウのみを使用。ブドウ栽培~ワイン造り~カバの生産までを一貫して行っています。地下に5層、総延長距離にして約30kmにも及ぶ地下セラーのボデガ(醸造所)で製造しています。

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