「シャルドネを良く知る」シリーズ④
第3回目まではシャルドネの風味について、「一般的な風味はどのようなものか」、「フランス各地、カリフォルニア、オーストリアの具体的な風味」について述べました。
今回第4回は、イタリア・チリ・日本の代表的な地域の風味について紐解きます。
さらに、シャルドネタイプごとの料理とのマッチングについて記述します。
シャルドネワインの選び方の参考にして下さい。
シリーズ① 「シャルドネのイメージ」
○シャルドネの生誕地・素顔は?
〇「白ワインの女王」は個性がない?
○たくましいシャルドネ
○「女優のような」シャルドネ
○シャルドネの親はピノ・ノワール、兄弟はガメイ
シリーズ② 「世界中で異なった姿を見せるシャルドネ、フランスは?」
○風味は地域でこんなに変わるシャルドネ
〇樽やステンレスによる発酵・熟成でどう変わる?
〇フランス
・ブルゴーニュ地方
・コート・ドール
・シャブリ
・マコネ
・シャンパーニュ
シリーズ③ 「カリフォルニア、オーストリアのシャルドネの姿と風味は?」
〇カリフォルニア
〇オーストラリア
○ワイン検定(ブロンズ)記載内容
シリーズ④ 「イタリア・チリ・日本のシャルドネの姿と風味は?」 ・・・今回
〇イタリア
〇チリ
〇日本
〇料理とのマッチング
イタリア
イタリアのブドウ品種は数多く、シャルドネは白ブドウ品種の中でも国内で5番目(2015年OIV)の栽培面積を誇っています。それでもイタリアは世界で5番目に多い20,000haでシャルドネを栽培しています。(表)
イタリアのシャルドネの特徴は、何と言っても多様性。南北1,360Kmに長く伸びた国土の気候や土壌の違いによって、地方毎に異なるスタイルのシャルドネ・ワインが生産されています。
白ワイン
白ワインは主に北東部のフリウリ・ヴェネツィア・ジョージア州やトレンティーノ・アルト・アディジェ州、最南端のプーリア州で造られています。フリウリ・ヴェネツィア・ジョージア州では19世紀から、最南端のプーリア州では近年栽培が盛んになりました。
北部の冷涼な産地(フリウリ・ヴェネツィア・ジョージア州など)では柑橘類の風味とすっきりとした酸を備えたワインに、 一方で温暖な産地(プーリア州など)では完熟した果実の風味のある、味わい豊かなワインに仕上がっています。
スパークリングワイン
ロンバルディア州のフランチャコルタ、イタリア最北のトレンティーノ=アルト・アディジェ州のトレント県では瓶内二次発酵のスパークリングワインが造られています。
フランチャコルタが果実味に特徴があるのに対し、トレントはミネラル感が軸にあります。
・フランチャコルタは、シャンパーニュが寒冷地が生み出す美しい酸とミネラルに由来するエレガンスが特徴なのに対し、豊かな土壌と温暖な気候に育まれた香り高く果実味に溢れた味わいのスパークリングワインです。
・トレントはシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵の方法で造られます。ブドウ品種はシャルドネをはじめ、ピノ・ノワール(ピノ・ネーロ)、ムニエとピノ・ビアンコのいずれかです。山から吹き降りる冷涼な風と、石灰質の土壌が生むミネラル感と酸が印象的なスプマンテです。
チリ
自然環境に恵まれたチリ。シャルドネの国内生産量は白ブドウ品種の中で第2位を誇り、西を太平洋、東をアンデス山脈に囲まれた特異なテロワールを活かしたブドウ栽培が盛んです。
チリ産のシャルドネは、白桃やパイナップル、トロピカルフルーツなどの果実味豊かなスタイルです。
実はチリにおけるシャルドネ栽培の歴史は意外にも浅いものです。
1980年代に世界的に広がったヴァライエタルワインブームではカベルネ・ソーヴィニョンとシャルドネが主役だったのでした。
しかし、チリでは当時シャルドネがほとんど栽培されておらず、1985年になって国際市場に参入すべくシャルドネを栽培するようになったのです。
現在、日本で現在一番飲まれているのがチリのワインです。 牽引するのは品種名が表示されたヴァラエタルワインが主で、安価でかつ味もラベルもわかりやすいのものです。これらの低価格帯のチリのシャルドネはフレッシュでフルーティー、ごくごく飲めてしまうようなスタイルです。
一方、近年脚光を浴びているのが、新鮮な果実味と複雑味を備えた高品質なシャルドネです。沿岸部のカサブランカ・ヴァレーやチリでは珍しい石灰質土壌を持つ北部のリマリ・ヴァレーは冷涼な海風が吹きます。また南部のイタタ・ヴァレーやビオビオ・ヴァレーは高緯度です。これらの涼しいエリアから上質なシャルドネが生まれています。
例えば、カサブランカ・ヴァレーは、朝は霧に覆われ、一年中南極からの寒流・フンボルト海流による冷たい海風を強く受けてブドウがゆっくりと成熟し、収穫までに1カ月も長く確保できます。これにより、酸をしっかり蓄えたままの完熟したシャルドネが収穫でき、しっかりとした酸とミネラル、複雑な香りと味わいの両方を備えた高品質なシャルドネワインが造られています。
また、これらの地域では、ぶどう栽培に理想的な気候を活かしてオーガニック栽培もさかんです。
日本
日本でのシャルドネの栽培面積は、甲州、マスカットベーリーAに注ぐ3位の173haで、ヨーロッパ系の白ぶどう品種では最も多く生産されています。
本格的な栽培が始まったのは1980年代、日本でもヨーロッパ系品種を垣根栽培してワインを作ろうという機運が高まりました。
現在の栽培面積は最大生産国のフランス54,000haのわずか約1/300ですが、香りや味わいがデリケートなものが多く、長野、山形、山梨、そして兵庫、熊本、新潟、大分でも造られています。
料理とのマッチング
料理の素材として白身魚や牡蠣やホタテなど魚介系や、鶏肉など白いお肉を使った料理によく合います。
そのうえで、味付けによって下記の2つのタイプに分けてワインのスタイルを変えます。
【料理】
★前菜全般、野菜料理、パテ
★牡蠣などの新鮮な魚介類、お寿司、お造りなどの和食
★イカの天ぷらやフリット、ソテーやムニエルなどの魚料理
★カルパッチョなど酸味のあるソースの味付けの魚料理
★濃厚過ぎない味付けやソースの鶏や豚
※カリフォルニア州(ソノマ・コースト)、オーストラリア(南オーストラリア・ヴィクトリア州・タスマニア)、フランス(シャブリ)、チリ(カサブランカ・ヴァレー)など。
【料理】
★バターやクリーム系のコクのあるソースを使用した魚料理
★鶏や豚といった白身の肉料理(濃厚なフライなど)
★家庭料理ならマカロニグラタンや、チキンのクリーム煮など
⇒樽使用のボリューム感のあるリッチなシャルドネワイン
※フランス(ブルゴーニュ)、カリフォルニア州(ナパ・ヴァレー)、オーストラリア(西オーストラリア)など。