「リムーの風景」と「ブランケット ド リムー」

クレマンの全体像・・・スパークリングワイン・シリーズ②

 フランスのシャンパーニュ地方以外で造られるスパークリングワイン・クレマンをわかり易く解説します。
クレマンの全体像やそれぞれの地域の特徴、各地域ごとの比較を3回にわたって述べます。
第1回目はクレマンの全体像です。

クレマン(Crémant)とは

 「クレマン」は、シャンパーニュ地方以外のフランス国内の認められた地域で、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵製法で造られるスパークリングワインの名称です。
シャンパーニュは、シャンパーニュ地方で造られた厳格な規定の発泡性ワインですが、一方で、シャンパーニュ地方以外で造られたものは、同じブドウ品種、製法、熟成期間であっても“シャンパーニュ”と名乗ることはできません。
「クレマン」は、フランスのスパークリングワインにおいて、シャンパーニュの次に位置づけられます。

 「クレマン」は、瓶内二次発酵によるきめ細やかな泡立ち、芳しい香りと奥行きのある味わいが楽しめ、品質面で一定のレベル以上である事が保障されています。フランス内でもわずか8つの認定地域のみに名乗ることが認められています。

 クレマンの中には、オーガニックで造られたものや、シャンパンと同じく「ミレジメ」という収穫年記載のあるクレマンも存在します。
フランス国内では圧倒的な支持を得て消費量も多く、また、生産量の約32%が日本やヨーロッパなどに輸出されています。

クレマンの産地

 フランス国内でクレマンを名乗れるA.O.C.産地は、以下の8地域で、ラベルに“Crémant de(またはdu)~”と表示されます。

・ジュラ地方:クレマン・デュ・ジュラ
・サヴォワ地方:クレマン・ド・サヴォワ
・ボルドー地方:クレマン・ド・ボルドー
・ラングドック・ルーション地方:クレマン・ド・リムー
・ローヌ地方:クレマン・ド・ディー
・アルザス地方:クレマン・ダルザス
・ロワール地方:クレマン・ド・ロワール
・ブルゴーニュ地方:クレマン・ド・ブルゴーニュ

 スティルワインの主要なAOCは10地域がありますが、クレマン及びシャンパーニュなどAOCが名のれないのは南西地区とプロバンス・コルス地域の2地域です。(ただし、2地域ではAOCに認定されていませんがスパークリングワイン自体は造られています。)
 また、ラングドック・ルーション地方ではクレマン・ド・リムーと地域内のリムーという場所の名前を冠しています。同じく、ローヌ地方ではクレマン・ド・ディーとディーという場所の名前を冠しています。

フランス・クレマン地図

クレマンの特徴

■味わい

 クレマンは、シャンパンに匹敵するほどの香りや味わいです。フレッシュでスッキリとした味わいが特徴で、全体的に酸が強すぎず、飲みやすく様々な料理と合います。瓶内二次発酵製法によるきめ細かな泡、柑橘の香りと瓶内熟成による酵母由来の香りで、複雑性もあります。高品質ながらも手軽な価格帯です。

地方による個性

 地方ごとに使用するブドウ品種の違いがあり、その地ならではの品種が使われています。勿論、シャンパンと同じシャルドネやピノ・ノワールを使用する場合もあります。このため、ワインの味わいの個性は、冷涼な地域のキレのある繊細なクレマンから、果実味豊かな力強さのあるクレマンまで多様です。
 有名生産者が手掛けていることも多く、生産者ごとの個性が際立ちます。複雑性のあるクレマンは料理に合わせる場合にも、前菜からデザートまで幅広くマリアージュできるスパークリングワインです。

■シャンパーニュとクレマンとの比較

 シャンパーニュよりも瓶熟成期間が短いものが多いので、味わいはすっきり軽く、お値段も控えめで懐に優しいのが特徴です。
シャンパーニュの瓶熟成期間は最低15か月クレマンは最低9カ月(クレマン・ド・ディーのみ最低12か月)です。

クレマンの比較①
クレマンの比較①

使用されるブドウ品種とワインのタイプ

 

 先に述べたように各地域でAOC規定に則り使用されるブドウ品種は様々です。
概して白ブドウ品種が多く、当然ですがその地域の土着品種を用いています。

 シャンパーニュの主要品種であるシャルドネとピノ・ノワールはクレマン・ド・ディーを除く全ての地域で使用が許可されているのが特徴です。
そして、造られるクレマンのタイプは、白とロゼの2つのタイプを製造する地域が多いのですが、クレマン・ド・ディーとクレマン・ド・サヴォアは白タイプのみの製造になっています。

クレマンの比較②
クレマンの比較②

クレマンのAOC規定

 クレマンはAOC(フランスの原産地呼称統制法)規定により、栽培や製法が厳しく制限されています。
その内容は
 ・使用品種をそれぞれのAOCごとに規定
 ・手作業による収穫、少量パレットでの運搬
 ・150キロの果実に対し100リットルの搾汁制限
 ・全房もしくは除梗したブドウからマスト(果汁、果皮、種子等の混合物)を得ること
 ・瓶内二次発酵
 ・最低9ヶ月間、澱と共に寝かせること
 ・全体で最低12ヶ月間熟成をすること
 ・ドザージュ量は50g/L未満

これにより品質の保証がされています。

 

クレマンの歴史

 クレマンの歴史については、様々な説があります。

■古代ローマ時代

 発祥は2000年ほど前のローマ帝国時代にまで遡ります。フランス南部が「ボコンス」という国だった時期に、生産がうまくいかなかったワインを放置しておいたところ、翌年の春に発泡している液体が出来上がったことに由来すると言われています。

その他、ラングドック・ルーションやローヌ地方で次のような逸話が残っています。

■リムー(ラングドック・ルーション地方

 リムーはスパークリングワイン発祥の地とも言われています。
1531年に記録された文献に、この地のサン・ティレール修道院でボトル内のワインが再発酵したのを修道士が偶然発見したのが始まりとされています。
シャパーニュの元祖ドン・ペリニヨンもこの地で学んだと言われていますが、それよりもより150年以上前に製法が発見されていたことになります。

■ディー(ローヌ地方)

 ローヌではるか昔、ワインを入れた容器を冬の間ずっと川に放置し翌春に空けたところ、偶然にも甘く美味しい発泡性ワインができていたのだとか。それが現在にもつながっており、ディー村だけはローヌでは珍しく、スパークリングワインが主役の産地として発展してきました。

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