リムー(ラングドック)

クレマン②(アルザス・ラングドック&ルーション・ジュラ・サヴォワ地方)・・・スパークリングワイン・シリーズ④

 フランスのスパークリングワイン・クレマンが造られる8地域のうち、第2回目に続き残りの4地域について詳しく述べます。
第3回目はラングドックルーション、アルザス、ジュラ、サヴォワ地方です。

⑤クレマン・ド・リムー(Crémant De Limoux

〇特徴
 南フランスのラングドック地方一帯は、夏は暑く乾燥した地中海性気候ですが、リムーは、海洋性気候の影響も受け、標高も高いので比較的冷涼です。ラングドック地方では異質とも言える、繊細でひときわ上品なワイン、クレマン・ド・リムーを産む銘醸地です。

 また、1531年に記録された文献に、この地で発泡性ワインを生産していた記録があるのですが、現在まで受け継がれたその技術を用いて造るAOCブランケット・ド・リムーは、ローヌのクレレット・ド・ディー同様、古代製法を用いた特徴的な銘柄として知られています。

〇使用品種(4種類)
【白ブドウ】
シャルドネ(白・ロゼ)
・シュナン・ブラン(白・ロゼ)
・モーザック(白・ロゼ)
【黒ブドウ】
・ピノ・ノワール(白・ロゼ)

(特徴)
 クレマン・ド・リムーの認定ブドウのうち、主要品種として用いられるのはシャルドネ
 シャルドネ50%以上、シュナン・ブラン10~40%、モーザック20%以下、ピノ・ノワール30%以下の使用制限、シャルドネとシュナン・ブランを合わせて90%以下の使用制限があります。

〇味わい
 気候の特色上南フランスにもかかわらず、ブドウには豊富な酸が育まれ、活き活きとしたフレッシュな酸味のある爽快な飲み口です。

リムー(ラングドック)

⑥クレマン・ダルザス(Crémant d’Alsace)

 クレマン・ダルザスはクレマンの中で生産量と消費量が最も多く、フランスのクレマン生産量の約半分を占めます。
アルザス地方は、標高が高く昼夜の温度差が大きく降雨量が少ないため、ぶどうがよく育ちます。
 歴史的にドイツワインの影響を強く受け、クレマン・ダルザスにも、リースリングなどをはじめドイツらしい品種が使用されます。
また、アルザスでは、オーガニックブドウを用いて造られたクレマン・ダルザスも多く、自然な果実味の味わいを楽しめます。
 クレマン・ダルザスには白とロゼがありますが、ロゼはピノ・ノワール100%で造られます。また、ガス圧は20℃で4気圧以上でなければなりません。

〇使用品種(6種類)
【白ブドウ】
・リースリング(白のみ)
ピノ・ブラン(白のみ)
ピノ・グリ(白のみ)
・オーセロワ(白のみ)
・シャルドネ(白のみ)
【黒ブドウ】
・ピノ・ノワール(白・ロゼ)

(特徴)
・多くは早く熟す平原のピノ・ブランを使用します。
シャルドネは熟成のポテンシャルとエレガントさを加えるため、アルザスではクレマンにのみ使用を認められています。
リースリングは芳香が強すぎる場合が多いのですが、フレッシュで活気がある味わいになります。

〇味わい
 冷涼なこの地域で造られるブドウ品種のため、さわやかな香り、味わいは気品があり爽やかな印象で、きりっとした酸が特徴です。ロゼはピノ・ノワールのみで造られ上品な香り、味わいです。
 シャンパーニュと比べるとシャンパーニュよりはアルコール度数がやや低い(最低アルコール度数10.5%、平均11%前後)ので、複雑さの中にもまろやかさがあり、すっきりとした飲みやすさがあります。


アルザス

⑦クレマン・デュ・ジュラ(Crémant Du Jura

〇特徴
 ジュラ地方では18世紀から瓶内二次発酵製法の本格的なものを造っていましたが、クレマン・デュ・ジュラがAOCに認定されたのは1995年になってからで、クレマンの中でも比較的新しい銘柄です。他のクレマンと比べ生産量が少なめで価格も高め繊細で上品な味わいが多い。

〇使用品種(6種類)
【白ブドウ】
シャルドネ
・サヴァニャン(白・ロゼ)
・ピノ・グリ(白・ロゼ)
【黒ブドウ】
ピノ・ノワール(白・ロゼ)
・プールサール(白・ロゼ)
・トゥルソー(白・ロゼ)

(特徴)
 シャルドネやピノ・ノワールを主体としますが、白・ロゼ共にジュラならではの品種が補助として使われています。
 白はシャルドネ、ピノ・ノワール、トゥルソーで70%以上、ロゼは黒ブドウを70%以上使用の制限があります。

〇味わい
 ドライでエッジの利いたニュアンスの辛口です。

ジュラ地方

⑧クレマン・ド・サヴォワ(Crémant Savoie)

〇特徴
 サヴォワ地方で生産されたワインだけが「クレマン・ド・サヴォワ」を名乗ることが可能で2015年にA.O.C.認定されました。
 サヴォワ地方はフランス東部にあるサヴォワ県とオート=サヴォワ県を併せたエリアでスイス、イタリアと国境を接しています。ワイン産地としてはスイスにあるレマン湖の南部からシャンベリー(サヴォワの都市)にかけての丘陵地に広がっています。

「ヴァン・ド・サヴォワ・ムスー」を生産していた地域のものが2015年9月、クレマン・ド・サヴォワとして認定されました。

〇使用品種(8種類)
【白ブドウ】
ジャケール(白のみ)
アルテス(白のみ)
・モンデューズ・ブラン(白のみ)
・アリゴテ(白のみ)
・シャルドネ(白のみ)
【黒ブドウ】
・モンデューズ(白のみ)
・ガメイ(白のみ)
・ピノ・ノワール(白のみ)

(特徴)
 サヴォワの土着品種であるジャケール、アルテスが主体となる他、補助としてモンデューズも使用可能になります。
土着品種のジャケールかアルテスを最低で60%以上、しかもジャケールは40%以上使用という規定があります。

〇味わい
 ジャケールの果実味が控え目で酵母っぽさを生かしたミネラルやフローラル感に特徴があります。

サヴォア地方

〇その他特筆するスパークリングワイン

1.クレレット・ド・ディー

 南部、ローヌ地方の北部で生産されるクレレット・ド・ディーは、フランス国内で最も標高が高い所で生産されるワインです。
クレレット・ド・ディーは瓶内二次発酵(シャンパン方式)のスパークリングワインで、クレレット種が100%、最低瓶内熟成期間は9か月、残糖15グラムです。

 また、クレレット・ド・ディー・メトードアンセストラルというワインがあります。メトードリューラル(田舎方式)という、タンクで途中まで発酵させ、その後に瓶に移し替えるという製法で造られます。ブドウ果汁を低温で発酵させることで酵母の活動が抑制され発酵期間が長くなります。発酵が完全に終わる前に瓶詰めして仕上げるので、シャンパン方式と違って糖分添加をしないで仕上げます。このため「自然派スパークリング」とも呼ばれますす。
 残糖は35グラム以下。ほのかに甘みを感じる味わい、柔らかい口当たりです。ブドウ品種はミュスカ種が主体(75%以上)でクレレットは補助品種です。日本で多く売られているのはこのクレレット・ド・ディー・メトードアンセストラルです。

ローヌ地方・クレマン・ド・ディー

2.ブランケット・ド・リムー

 ブランケット・ド・リムーは温暖な地中海性気候のラングドック地方で生産されています。モーザック(白ぶどう)90%以上使用し、シャルドネやシュナン・ブランとアッサンブラージュして瓶内二次発酵で造られます。泡の繊細さが特徴で、白い花やトーストのかぐわしい芳香で五感を愉しませてくれるスパークリングワインです。
 シュナン・ブランを主原料として作られる「クレマン・ド・リムー」とは異なります。シャンパーニュよりも先に発泡性ワインを生み出したと言われています。

リムー(ラングドック)
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