10月下旬の晴れた日、突然大きな白い花をつけた「月下美人」。
ついこの間まで暑さが残っていましたが、めっきり気温が下がりました。
大きな寒暖差はとかく身体の具合に影響しますが、自律神経が敏感に反応し、体は変化に追いつかずに不調になりがちです。
そんな折、家の外に出していた月下美人を部屋の中に取り込みました。
月下美人も急激な気温低下に対応しきれないかもしれないと思ったからです。
何しろこの花はメキシコや中南米が原産地と言われていますので、この変化には対応しきれないでしょう。
部屋に入れて数日、今まで2~3年花をつけることのなかった月下美人が一斉に花を咲かせました。
そして、甘さを感じさせる濃厚な香りが部屋に広がりました。
黄色の雌しべの周りに細長くも大きな花が取り囲む姿は華麗です。
純白のドレスをまとってダンスする貴婦人の趣きがあります。
しかし、夕方に花をつけたその姿はうな垂れ気味です。そして朝に再び様子をうかがうとビックリ。
すっかりと萎んでしまい白色は消えて頭を垂れています。
美人薄命ともたとえられるこの花は、広く伝えられているように一夜限りの花でした。
その日の夜花を天ぷらにして食卓に並べてみました。
食感は天ぷらのサクサク感が際立ちます。
食材としての花の風味は、衣のサクサク感が花をすっかり包み込んで、花の存在を感じさせないほど繊細でした。
素材として強く自己主張をしない月下美人を白ワインと一緒に戴きました。
シャルドネの白ワインとです。シャルドネのワインは栽培地や造り手の個性を反映するニュートラルな品種です。
月下美人、シャルドネのどちらも見た目やイメージは華やかですが、性格は控えめ。似た者同士の感があります。
咲く姿も食感も儚さを感じさせる月下美人。
ようやく到来した秋の寂しさを感じさせる瞬間でした。
月下美人とは
〇開花の特徴
・日本での栽培下では6~11月に咲き、1日花と言われ夕方から咲き始め朝には萎んでしまう。
・花の大きさは20~25cm程度。ジャスミンを思わせる強い香りがある。〇原産地
・原産地は、メキシコの熱帯雨林地帯。
・メキシコから中米にかけて分布する森林性サボテン。サボテン科クジャクサボテン属。
・ジャングルの中で、古木の幹や腐葉土やコケの層に根をおろして育つ。〇名前の由来
・昭和天皇が皇太子の頃、訪問した台湾でこの月下美人をご覧になり、名前を尋ねた。当時の台湾総督府の長官が、夜に美しい花をつける事から「月下の美人です」ととっさに答え、この名がついたと言われています。