「メルローを良く知る」シリーズ⑥
これまで、フランス・イタリア・米国・スペイン・チリのメルローを紐解きました。この第6回目では、ニュージーランド・日本のメルローを具体的に紐解きます。主なブドウ産地の動向や特徴、地域ごとワインの特徴を解説します。併せて、料理とのマッチングを解説します。
シリーズ① ぶどう「メルロー」の素顔
〇「名脇役」メルロー・・イメージ
〇メルローが名脇役である理由・・・ブドウの実像
〇健康的にすくすく育つ青年
〇多くの人に愛される中庸の好青年
〇演じれば協調性のある名脇役、時に主役もこなせる
〇メルロー(Merlot)・・・ワイン検定(ブロンズ)記載内容
シリーズ② 世界のメルローの起源・親族
〇起源は鳥の「ツグミ」
〇義兄弟の多いメルロー・・・親族関係
〇黒ブドウの中の中庸の品種
〇世界で造られるメルロー・・・栽培面積
シリーズ③ ワインの風味と世界の産地
〇最大の長所=口当たりの良さ
・・・一般的な風味
・ワインの色、香り、味わい
〇気候の違いによる風味の変化
〇ニューワールドの風味
〇熟成による風味の変化
〇世界の主なワイン産地
シリーズ④ メルローのワイン産地(フランス・イタリア)
〇フランス
〇イタリア
シリーズ⑤ メルローのワイン産地(米国・スペイン・チリ)
〇米国
〇スペイン
〇チリ
シリーズ⑥ メルローのワイン産地(ニュージーランド・日本)と料理とのマッチング
〇ニュージーランド
〇日本
〇料理とのマッチング
ニュージーランド NEW ZEWLAND
ニュージーランンドはソービニヨン・ブラン大国ですので、全てのブドウ品種の総計の6割を占めています。その中でメルローはわずか1000haの栽培面積。メルローはピノ・ノワールに次ぐ第5位の生産量です。
![ニュージーランドの栽培面積・メルロー](https://grapewine37.com/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
それでも特徴がありますので、紹介します。ニュージーランドでのメルローの主な栽培地はより温暖な気候の北島。北島ではボルドー系品種の一つとして栽培されていて、様々な土壌の性質がワインの風味に深みや複雑性を与えています。 中でもノースランド、オークランド、ホークス・ベイの北部地域。ノースランドは砂利質、オークランドは粘土質、ホークス・ベイは火山性黄土や砂利質で、それぞれに土壌のタイプはさまざまです。ワインは、基本的にカルベネ・ソーヴィニヨンとブレンドされます。
![ニュージーランドのメルロー産地](https://grapewine37.com/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
特にホークス・ベイはフランス・ボルドーに似ていてよく知られています。温暖な海洋性気候であることや、土壌がギムレット・グラベルと呼ばれる水はけの良い砂利質のやせた土地であることから、ボルドー品種のメルロやカベルネが多く栽培されています。
また、ニュージーランド最高の赤ワインの一つに数えられるのが、オークランドから北へ60kmのマタカナで造られる「プロヴィダンス」。メルロ主体に亜硫酸無添加で造られていました。1990年代、「NZのル・パン」と一躍話題になり、映画「ウスケ・ボーイズ」のモデルになった故・故浅井昭吾(麻井宇介)氏にも大きな影響を与えました。
![ニュージーランド プロヴィダンス](https://grapewine37.com/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
日本 JAPAN
メルローの生産量は、日本ワインの中では6位(2018年)です。白ブドウの甲州、ナイアガラ、デラウェアが多く、赤ワイン用ブドウ品種の中で「マスカット・ベーリーA」、「コンコード」に次ぐ第3位を占めています。
しかし、メルローワインの生産は、年間1296トンに留まります。世界第13位のニュージーランドにおけるメルローの生産量は9,240トンですから、ニュージーランドに比べても1/7にも満ちません。
![日本のワイン生産量・メルロー](https://grapewine37.com/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
ただ、ヨーロッパ系ブドウ品種の中でカベルネ・ソーヴィニョンやピノ・ノワールは日本は高温多湿な気候条件のため作りにくいのに対し、メルローは日本の気候に比較的合っています。そのため、欧州系品種では栽培面積は1位です。やや水分が多い土壌でも完熟できるメルロは、長野県や山梨県、北海道などで優れたワインが造られています。
質の高いメルロワインも造られていますので、紹介します。まずは、長野県の塩尻市桔梗が原のシャトー・メルシャンの「信州桔梗ヶ原メルロ1985」。1989年のリュブリアーナ国際ワインコンクールで大金賞を受賞しています。
また、近年では長野県塩尻市片丘のワイナリー「ドメーヌ・コーセイ」が、2021年にヨーロッパの品評会であるボルドー酒チャレンジにおいて最高金賞を受賞しています。二大オーク材産地の樽で育成した「片丘メルロ2020」です。
![「シャトー・メルシャン」と「ドメーヌ・コーセー」](https://grapewine37.com/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
料理とのマッチング
メルローワインは、渋みが控えめで丸みのあるふくよかな味わいなので、料理が並ぶ日本の食卓でも多彩にマッチングします。
ただし、カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、サンジョヴェーゼなどとブレンドされることも多く、ブレンドされたワインでは機軸となる品種特性に傾いたマッチングにメルローらしいふくよかさな味わいを加味したものになります。例えば、カベルネ・ソーヴィニョンなどボルドーブレンドであればジンギスカンやラムなど少し癖のあるお肉とも相性が良くなります。
一般的に料理とのマッチングは「調和」、または、「補完」「中和」の考え方によります。
メルローの場合、多くは「調和」によります。具体的な料理に照らし合わせてみます。
●やわらかく、まろやかな肉料理:ミートボールやミートローフ、ハンバーグ、ローストビーフ
・・・ふっくらとした食感とまろやかな味わいがワインのワインの柔らかさと同調する
●煮込み、鍋料理:ビーフシチュー、すき焼き、肉じゃがなど
・・・滑らかな食感と旨みがワインのワインの果実味と同調する
●グリルした肉料理:唐揚げ、タレの焼鳥、ローストターキー、北京ダックなど
・・・柔らかな肉料理は食感と甘みがワインのワインの柔らかさと同調する
●イタリア料理:トマトベースのものやミートソースパスタ、リゾット、イタリアンスタイルのソーセージなど
・・・スムーズで丸みがある食感と旨みがワインと同調する
●和食の根菜の煮込み:筑前煮
・・・根菜類のどこか土っぽさを感じるがメルローのそれと同調する