ニュージーランド風景とセントラル・オタゴ フェルトン・ロード

ピノ・ノワールの主要産地(ニュージーランド・イタリア)・・・「ピノ・ノワールを良く知る」シリーズ⑤

ピノ・ノワールを良く知る」シリーズ

 第5回目のシリーズでは、世界でフランス、米国、ドイツの次に多く造られているニュージーランド・イタリアのピノ・ノワールを具体的に紐解きます。ニュージーランド・イタリアの主なブドウ産地の動向や特徴、地域ごとワインの製造上の特徴や色合い、香り、風味を解説します。

シリーズ① 「ぶどう「ピノ・ノワール」の素顔

〇ブドウなのに「黒い松ぼっくり」・・・名前の由来
〇寒冷地で育つ小顔の貴公子・・・ブドウの特徴
〇育て方が難しい貴公子・・・ブドウの特徴
〇人気の貴公子にも辛い事情がある
    ・・・大量には栽培されていない
〇気難しいピノ・ノワール
    ・・・大量生産に向かない理由

シリーズ② 「ピノ・ノワーのルーツとワインの特徴

〇多くのブドウ品種のルーツの一つ
    ・・・ピノ・ノワールの家系図
〇別名の宝庫ピノ・ノワール・・・シノニム
〇ワインは繊細で高貴
  ・・・ピノ・ノワールは上品なワインを造る
〇ワイン検定(ブロンズ)記載内容

シリーズ③ 「ピノ・ノワールの世界の主なワイン産地とフランス

〇世界の主なワイン産地
〇【フランス】ブルゴーニュ地方
〇シャンパーニュ地方
〇アルザス地方・ロワール地方

シリーズ④ 「ピノ・ノワールの主要産地(米国・ドイツ)

〇【米国】カリフォルニア、オレゴン
〇【ドイツ】バーデン、ファルツ

シリーズ⑤ 「ピノ・ノワールの主要産地(ニュージーランド・イタリア)

〇【ニュージーランド】セントラル・オタゴ、マーチンボロ他
〇【イタリア】トレンティーノ・アルト・アディジェ他

シリーズ⑥ 「ピノ・ノワールの主要産地(オーストラリア・チリ・日本)

〇【オーストラリア】ヤラ・ヴァレー他
〇【チリ】サン・アントニオ・ヴァレー他
〇【日本】北海道他
〇料理とのマッチング

ニュージーランド

 ニュージーランドにおける2020年のピノ・ノワールの栽培面積は5,600haと全ブドウの栽培面積約4万haの14%にあたります。ニュージーランドは圧倒的にソーヴィニョン・ブランのシェアが大きい(2.4万ha、60%)のですが、ピノ・ノワールは黒ブドウの中では最大で、全ブドウのなかでも2番目の人気品種です。高品質なものも数多くあります。

 ピノ・ノワールの歴史は大変浅いもので1990年末からですが、この30年余りで大きく増加しています。成長した背景には、国をあげてピノ・ノワール生産に焦点を定めたことがあります。
冷涼な気候を好み、大量生産に向かず、産地を選ぶピノ・ノワールの品種特性に着目したのです。ピノ・ノワールの価値を大切に考える小規模な生産者が成長の原動力になってきました。2019年現在、実にワインの生産者のうち87%(624社)が小規模な生産者です。

 ニュージーランドは日本列島のように南北に長く、その距離は1,600kmにも及び、北島と南島に分かれています。北島の亜熱帯的な雰囲気に対して、冷涼な気候を好むピノ・ノワールの産地の多くが南島にあります。 主な産地をあげると、マーティンボロ(北島)、マールボロワイパラセントラル・オタゴです。

〇風味の特徴

 それぞれの地域ではその冷涼な気候で昼夜の寒暖差があることから、生き生きとした酸味のピノ・ノワールが造られています。
しかし、その風味はその地の土壌や作り手の考え方により様々なタイプのピノ・ノワールワインが造られています。

ニュージーランド地図(ピノ・ノワール)

各々の産地

マーティンボロ

 1978年に政府の研究機関・科学産業調査局が、フランスやドイツの銘醸地を調べたうえでニュージーランドの各地の気候・土壌を分析・調査した結果、マーティンボロの気候がブルゴーニュに似ており、ワイン用ブドウに最適だと推奨しました。

 マーティンボロは、北島にある他のブドウ産地とは異なり、気温がかなり低く雨量も最も少ないため、推奨のとおりブルゴーニュ風の生き生きとしたピノ・ノワールワインが造られます。ソーヴィニオンブラン王国のニュージーランドにあっては、珍しくピノ・ノワールの栽培量がトップです。

 山地に囲まれた半海洋性気候で、夏場の昼夜の気温差が18℃と激しく、昼間は北西の強い風と強い日射を浴びる一方で、夜は急激に冷涼になります。このため、果皮が厚くなりつつ酸度も保たれたブドウになってます。

 土壌は、砂利とシルトと粘土からなる水はけのよい土層ですので、造られるワインはアントシアニンが豊富で色調が濃く、骨格がはっきりしたものになっています。

ニュージーランド マーチンボロー「アタ・ランギ ピノ・ノワール」

マールボロ

 マールボロはニュージーランド全体のワイン生産の70%を占めるほど重要な産地であり、加えてソーヴィニョン・ブランの畑が85%を占めるほどソーヴィニョン・ブランの王国です。
 その理由は昼が長く、夜は涼しい、陽光は明るく、収穫の秋には雨が少ない傾向にあるため、成熟期間を長く糖度を増しつつ、酸味も確保でき、栽培の自由度が高いことにあります。
 このことはピノ・ノワールの栽培にとっても好条件で、2,600ha(2020年)で栽培されています。ピノ・ノワールワインは、赤いフルーツが豊かで、丸みのある柔らかな味わい
 ただし、マールボロには異なる土壌(シルト質、砂質、粘土質、石基)がそれぞれに構成を変えた4つの地区があり、ピノ・ノワールワインはその土壌を反映した異なる味わいを呈しています。

ニュージーランド・マールボロ風景

ワイパラ(カンタベリー)

 黒ブドウには涼しすぎるほどの冷涼な地域です。しかし、東側と西側にある山によって絶えず吹く風を避けることのできる環境で育つピノ・ノワールは、全ブドウ畑の1/3をも占めるほど主要な品種となっています。
 土壌は山の麓の石灰質のローム層、川の地域の礫質の川の地域、内部地域の粘土と多様で、なめらかでミネラル感が豊かなものから、果実味の充実したものまでが見られます。しかし、一般的にはブルゴーニュ風のピノ・ノワールワインを造っています。

ニュージーランド風景

セントラル・オタゴ

 世界最南端の南緯45度付近にあり、半大陸性気候の産地で、昼夜の寒暖差が非常に激しい冷涼な産地です。偏西風によって運ばれてくる湿気を西側に位置する高い山脈が遮ってくれるため、夏場は短くほとんど雨が降らず乾燥しています。

 豊富な日照でブドウは良く熟し、それでいて朝晩は冷え込む。気温の日較差が大きい環境で、熟成はしつつ酸をしっかりと蓄えたブドウから品質の高いワインが造られています。
 風味は、ブラックチェリーとフレッシュハーブの香りが感じられ、タンニンと酸が豊富で重厚感があります。ブドウの熟度が高いためアルコール度が14度を超える場合が多いです。
 セントラル・オタゴは、最近世界中の評論家や愛好家から「ブルゴーニュ(フランス)「オレゴン(アメリカ)と並んで「世界三大ピノ・ノワール産地」と呼ばれることまでの産地になっています。

ニュージーランド風景とセントラル・オタゴとフェルトン・ロード

イタリア

 イタリアでのピノ・ノワールの栽培は相対的には大変少ないものです。
全ブドウの国内栽培面積が64万ha(2019年)であるのに対しピノ・ノワールは、約5,000haなので1%にも満ちません。
イタリアは有数のワイン大国ですから他の品種がそれだけ優位にワイン製造に使われているということでしょう。

 しかし、栽培条件が合う地域では、ピノ・ノワールの特性を生かしたワイン作りが行われています。
北イタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州を主体としてヴァレ・ダオスタ州ヴェネト州ピエモンテ州ロンバルディア州の北部の山岳地帯で栽培されています。また、イタリア中部の標高の高い地域ではわずかですが栽培されています。

 イタリア産のピノ・ノワール赤ワインは、一般的に渋みが少なく、かすかな甘味やなめらかさが魅力です。
しかし、芳醇で骨格のしっかりしたタイプから、エレガントで繊細なタイプまで、生産地域や生産者によって味わいが異なるものも造られています。

また、フランチャコルタに代表されるスパークリングワインやロゼにもシャルドネ、ピノ・ビアンコとともに使われています。

イタリア・ウンブリア カステッロ・デラ・サラピノ・ネロ
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