ニーノ フランコ 風景 プロセッコ

プロセッコ・・・スパークリングワイン・シリーズ⑦

 スプマンテ・シリーズの第3回目は、プロセッコについて詳しく解説します。
産地、格付け、使用ブドウ品種、製造方法、味わい、歴史、主な生産者などについて述べます。

プロセッコとは

 新鮮な果実風味とお手頃な価格で、現在シャンパンを抜き、世界で最も売れているスパークリングワインとなっています。
 年間3億本を産するシャンパーニュに対して、プロセッコの年間生産本数は6億2750万本(2021年)で、その78.5%は海外に輸出されており、世界で最も愛され消費されています。

プロセッコの産地

 イタリア北東部、ヴェネト州を中心に、フリウリ=ヴェネツィア・ジュ―リア州に跨る広い産地でプロセッコ(Prosecco)の生産が認められています。
中でも、イタリア・ヴェネト州、ヴェネツィアの北25kmほどにあるトレヴィーゾの町からコネリアーノ周辺の丘陵までの一帯は、プロセッコ発祥の地とされ、プロセッコは周囲に拡がります。
 生産地域は法律上三つに分類されますが、プロセッコとして全地域合わせて30,000haを超える広大な土地で生産されています。

イタリア地図(ヴェネト州・フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州)(プロセッコ))
イタリアのプロセッコ産地
イタリアのプロセッコ産地
プロセッコ産地詳細
プロセッコ産地詳細

格付け:DOCとDOCG

 2010年、ヴェネト州トレヴィゾ県の「コネリアーノ」「ヴァルドッビアーデネ」産のプロセッコがDOCGに昇格。イタリアを代表するスプマンテとなっています。
 コネリアーノとヴァルドッビアーデネ産がDOCGに昇格したのに伴い、これまでIGTだったエリア(トレヴィゾ、ヴェネツィア、ヴィチェンツァ、パドヴァ、ベッルーノのヴェネト州の各県とゴリツィア、ポルデノーネ、トリエステ、ウーディネのフリウリ ヴェネツィア ジュリア州の各県)で造られるプロセッコがDOCになりました。
 DOCの中ではトレヴィゾ県とトリエステ県で造られるものはその地名も表記してよいことになっています。DOCプロセッコ・トレヴィゾDOCプロセッコ・トリエステ

 さらに、トレヴィゾ県内はプロセッコ全生産量の約66%を占め、その上に全生産量の約33%を占めるDOCGコネリアーノ・ヴァルドッビアデーネと、わずか1%と稀少なDOCGアゾーロ・プロセッコがあります。

 特に、DOCGコネリアーノ・ヴァルドッビアデーネはコネリアーノ村からヴァルドッビアデーネ村に東西にのびた地域で、標高100~500mの真南向き斜面の素晴らしい日当たりと、アルプス山脈やアドリア海からの風による冷却効果で、ブドウが適度な酸を保ったまま完熟することができるため、高品質なプロセッコが造られています。

 そして、さらに限られた43村で造られたものだけが表記できる「リヴェ(Rive)」、最高のワインを産むとされるわずか106haの畑カルティッツェ(Cartizze)のDOCGスペリオーレ ディ カルティッツェ ヴァルドッビアーデネ(Superiore di Cartizze Valdobbiadene)がこの地域内にあります。

プロセッコの階層

味わい

・見た目の外観はグリーンがかった淡い麦わらの色です。
・香りはナシや青リンゴなどの淡いフレッシュなフルーツ、白い花を思わせる繊細な香り。
・味わいは豊かな風味と新鮮さ、糖度と酸度のバランスがよく感じられます。
・食感はふんわりとしたムース状の軽やかな泡

ぶどう品種の種類

 プロセッコに使用が認可されているブドウ品種はグレーラ(最低85%)と、最大15%までのグレラ・ルンガ、ヴェルディゾ、ペレラ、ビアンチェッタといった土着品種やシャルドネ、ピノ・ノワールをはじめとしたピノ系品種をブレンドすることが認められています。

グレーラ(Glera・白)
 プロセッコの主要品種です。2009年まで「プロセッコ」という名前で呼ばれていましたが、プロセッコは品種の名前でしたがDOCG昇格に伴って、「グレーラ」と名前が変わりました。グレーラ種を使ったワインは、マスカットほどではありませんが、フルーティーでフレッシュ感のある味わいが特長的です。シャンパーニュよりもほんのりとした甘さを感じられます。


グレーラ・ルンガ(Glera Lunga・白)
 ルンガ(Lunga=Long)の名の通り、実がやや縦長の品種です。
プロセッコ(グレラ)のクローン品種と長年考えられてきましたが、DNA分析の結果、違う品種だということが判明しました。グレラに比べてスパイシーな香りを持つといわれています。


ヴェルディーゾ(Verdiso・白)
 特徴的な卵型の実をつける品種です。柑橘類の香りと高い酸味が特徴で、陰干しして甘口ワインなどにも使われます。


ペレーラ(perera・白)
 Pere(ra)=pear(洋ナシ)の名の通り、見ためも香りも洋ナシを連想させる品種です。ヴェルディゾ同様甘口ワインにも使用されます。


ビアンケッタ・トレヴィジャーナ(BianChetta・白)
 早熟で冷涼な年にも熟すことができるためバランスをとるためにブレンドされています。単一でワインに仕立てられることはなく、フリウリの白ワインなどにも補助品種として使われています。


シャルドネ、ピノ・ネッロ(ピノ・ノワール)
 シャンパンをはじめ、カヴァ、プロセッコと世界の3大スパークリングワイン全てに使用されていてプロセッコにも使用が認められています。

グレーラ

製造方法

 製造方法はプレスした果汁を醸造タンクの中で冷却保存して、必要に応じて製造する「メトー ド シャルマ」(シャルマ式)です。
 この製造方法は、製造期間を短縮するだけでなく、ブドウ本来の香りをさらに高めフレッシュさを第一にした効率的な製造方法です。大型の加圧タンクで最短で30日間かけてベースワインを再発酵させて造ります。二次発酵に費やす期間は生産者によって異なりますが、3カ月から半年間を費やす製造者もいます。
 なお、シャルマ式は、イタリアでは「メトー ド マルティノッティ」(マルティノッティ方式)と呼ぶ生産者も少なくありません。
イタリアで大樽による二次発酵をフェデリコ・マルティノッティ氏が発明したのが1895年。タンク内二次発酵「メトー ド シャルマ」(シャルマ式)は、1910年にフランス人のユージン・シャルマ氏によって洗練されたものと解釈されています。

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プロセッコとシャンパーニュとの違い

 ここではプロセッコとシャンパンの違いを比較してみましょう。両者のスタイルはとても対照的です。

味わいの違い

 大きな違いの一つは甘辛(残糖分)の差です。
いずれも銘柄によって幅広い甘辛度のばらつきがありますが、一般的にシャンパンは残糖分が12g/l以下で造られています。一方でプロセッコは近年辛口化の傾向はありますが、おおむね12g/l以上になります。
 ワイン中の甘みを感じるようになる残糖価は12g/l前後と言われていますので、シャンパンは辛口プロセッコはわすかに甘い味わいです。

 さらにアルコール度も違います。アルコール度数シャンパンは平均12.5%前後に対して、プロセッコは平均11%前後と少し低いものです。

香りの違い

 次に製法による香りの違いがあります。
スパークリングワインは、主にアルコール発酵の際に発生する二酸化炭素をワインに閉じ込めることで発泡性を持たせています。
 シャンパンは瓶内二次発酵で造らますが、瓶内二次発酵方式ではボトルの中でワインと酵母(イースト)が長期間接触するため、ワインがイースト由来のパンのような香りを持つようになります。
 一方でプロセッコの「メトー ド シャルマ」(シャルマ式)では大きなタンク内でまとまった量のワインを短期間で仕込みます。そのためイーストとの接触が抑えられ、パンのような香りはワインにつきません
これによって、造られるプロセッコはブドウ本来の香りを邪魔するものがないフレッシュでフルーティーな味わいになります。瓶内二次発酵方式で造られるスパークリングワインに比べ、シャルマ式で造られるワインは手間がかからず安価。これもプロセッコの人気を支える魅力の一つとなっています。

甘辛度

甘辛度に関しては以下のようなタイプがあります。

〇Brut Nature(ブリュット・ナチュール)
味わい調整をしない極辛口です。

Extra Brut(エクストラ ブリュット)
極辛口で甘みはほぼ感じず、爽快感、鋭いキレがあります。
残糖度は0~6g/l。

〇Brut(ブリュット)
キリっとして親しみやすい辛口で、甘味はほぼ感じません。
残糖度は12g/l以下。

Extra Dry(エクストラドライ)
後味にかすかに甘みを感じる中辛口です。
残糖度は12~17g/l。

Sec(セッコ)
はっきりと甘みを感じる中甘口です。
残糖度は17~32g/l。

Demi・Sec(デミ セッコ)
残冬度は32~50 g/l。

・プロセッコの甘辛別の製造量は、
「Extra Dry(エクストラドライ)」が63%と多くを占めます。
・次いで25%を占めるのが、「Brut(ブリュット)」
・これに「Sec(セッコ)」が10%
「デミ セッコ(Demi・Sec)」が2%です。

 なお、白しか認められてこなかったDOCプロセッコにロゼが2021年1月から登場しました。ぶどう品種はグレーラが主体で、10~15%のピノ・ネロ(ピノ・ノワール)をブレンドします。
味わいはBrut NatureExtra Dryのみで、その間のExtra BrutやBrutはありません。

コネリアーノの風景① 世界遺産オンラインガイドより

プロセッコの歴史

 プロセッコの歴史は紀元前2世紀のローマ時代にさかのぼり、現在のフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州の州都トリエステから約10km北に位置するプロセッコ村でブドウが栽培され、プロセッコワインに由来するワインが生産されていたとされています。1868年に設立されたソシエタ エノロジカ トレヴィジャーナ社がプロセッコにスパークリングワインとしての地位を見出し、その価値はさらに高まりました。
 元来は街の名前であったこのワインとともに、ブドウ品種もプロセッコ種と呼ばれ、その名は広まっていきました。さらにこのブドウの栽培にはコネリアーノからヴァルドッビアデネに続く丘陵地が適していることがわかり、栽培地域は南イタリア、国外にも拡大していきました。
「プロセッコDOC」が認定されたのは2009年。ブドウ品種とワイン名、産地名が混在していたプロセッコは、ヴェネト州とフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州を生産地域として明示するものとなり、ブドウ品種は“ 旧名”であるグレーラ種に統一されました。

コネリアーノの風景 世界遺産オンラインガイドより

料理とのマッチング

 「プロセッコ」は食前酒としてはもちろん、メイン料理とも相性が良いワインです。
スパークリングワインの軽やかさや新鮮味あふれる果実味が料理を引き立ててくれます。
前菜
 生ハム・サラミなどのソーセージ類の塩分や旨みに対して、果実味あるさわやかなプロセッコによってバランスの良い味わいが楽しめます。
魚介系全般
  イワシの南蛮漬け、海老、タコ、イカ、鯵などの魚介のミックスフライ、魚介のグラタンなどメイン料理にもよく合います。

主な生産者

・アダミ(Adami)
1920年に設立された3代続くプロセッコの生産者。フレッシュな状態の香り、泡のキメ細やかさが特徴。ヴェネツィア国際映画祭でVIPルームで振る舞われたり、2009年アブルッツォで行われたG8サミットではサミット公式のワーキング ディナーとランチに採用されました。

・ニーノ フランコ(Nino Franco)
プロセッコの歴史が一番古いヴァルドッビアーデネ村で1919年に創業。白い花の香りが感じられ、繊細で果実味に富んだプロセッコ生産者。単一畑プロセッコの先駆者であり、ルッジェーリ、アダミと共に「3大プロセッコ」の一角として世界中に知られる実力派生産者です。

アダミ(左) と ニーノ フランコ(右) (プロセッコ)

・ルッジェーリ(Ruggeri & C. S.p.a.)
「ニーノフランコ」や「アダミ」と並んで3大プロセッコの1つ。シュール・リーを3ヶ月以上行い、繊細な泡を生み出すために二次醗酵をゆっくり行うワイン造りを行います。

・レ ベルトレ(Le Bertole)
1997年にワイナリーを設立、高品質なプロセッコの造り手としての歴史が始まりました。
DOCGの規定よりも厳しい収量制限を行い、品質の高い、さまざまなタイプのワインを造り上げ数多くのワインコンクールで入賞しています。

・ベッレンダ社(Bellenda)
高品質なスプマンテとスティルワインを生産しています。1987年に創業した新しいワイナリーです

ルッジェーリ アルジエオ(左)、クアルテーゼ(中)、ジュスティーノ(右)
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