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リースリングは万能選手・・・「リースリングを良く知る」シリーズ③

・・・「リースリングを良く知る」シリーズ③

シリーズ①「3月13日は国際リースリングの日」とシリーズ②「リースリングとシャルドネは親戚」に続き、
シリーズ③はリースリングの優れた能力について記載します。

シリーズ①

〇なぜ、「最も高貴なブドウ品種」と言われるのか?
〇豊かな酸味がリースリングの特徴
〇3/13は「国際リースリングの日」
〇栽培が難しくドイツが最大の栽培国
〇名前の由来は「花が流れる」から
〇リースリングの歴史

シリーズ②

〇シャルドネとは親戚
〇シャルドネとの様々な違い
〇親としての様々な交配品種を生み出すリースリング
〇ワイン検定(ブロンズ)テキストのリースリング記載内容

シリーズ③・・・今回

〇リースリングは万能選手
〇世界で最も熟成期間が長くとれる長命なワイン
〇長期熟成ができる理由
〇「樽」熟成は控えめでマロラクテイック発酵も行わない。
〇ペトロール香(石油香)の由来
〇地域ごとのペトロール香

シリーズ④

〇世界の産地
〇味わいは地域ごとにどう違う?
・モーゼル(ドイツ)
・ラインガウ(ドイツ)
・アルザス(フランス)
・イーデン・ヴァレー(オーストラリア)
・クレア・ヴァレー(オーストラリア)
・アメリカ

リースリングは万能選手

 リースリングは極甘口から辛口まで様々なタイプのワインを造ることができる万能選手です。

 ブドウとしての長所は酸のしっかりとした熟成能力の高いことで、遅摘みワインやアイスワインなどの極甘口から辛口、さらには発泡性があるものまで創り出し、そのスタイルは白ワイン品種の中でも群を抜いて多彩です。
そして、全てのタイプの味わいに共通している味わいは、硬さのある鋭い酸と、透明感があり引き締まった果実味、カチッとした厳しさが感じられるのが、この品種の特徴です。

 このように、、味わいが多様性で様々なタイプのワインが造れる理由は、リースリングが収穫までの時期の長さにあります。通常ブドウは開花から100日前後で収穫となると言われます。
しかし冷涼な地域で栽培されるリースリングはその期間が120日以上と言われます。リースリングは、成熟期間がゆっくりしているため収穫は狙った熟度や味わいや酸度で選択的に行えるのです。

世界で最も熟成期間が長くとれる長命なワイン

 リースリングのワインは驚く程の長期熟成能力を持つ事で有名です。

特に甘口は一般的にアルコール度数が低い(一桁である事が多い)のですが、それでも20~30年、時には50年、100年という長い時間をかけてゆっくりと熟成していく、世界でも最も長命なワインの一つです。

長期熟成ができる理由

 長期熟成による高品質の辛口ワインを生み出す理由は、高い酸度にあります。
通常、総酸度が低めのブドウ品種は残糖が少なくても甘く感じます。しかし、リースリングは、非常に酸度が高いうえに、酸を和らげるマロラクティック発酵も稀なので、多くの酸が残ります。
このため、残糖度が多くても酸度が高いため辛口に分類されます。

 高い酸と適度な甘さが心地良いバランスを醸し出し、これによってシャルドネを超える抜群の長期熟成のポテンシャルを生みます。
また、甘口の場合でも、この鋭い酸が残糖分とバランスを取って、軽やかで繊細な、他のぶどう品種にはないスタイルの甘口を生み出します。緊張感のある高貴な味わいが、リースリングの真骨頂と言えます。

リースリング モーゼル
リースリング モーゼル
リースリング・スパークリング
リースリング・スパークリング

「樽」熟成は控えめでマロラクテイック発酵も行わない。

 リースリングは華やかな花や果実の香りが持ち味ですから、オークの小樽による発酵や熟成は好ましいとはされずワインをまろやかにするマロラクティック発酵も一般的には行われません。

 ただし、ドイツやアルザスの優れた生産者では、大樽を使用して発酵・熟成を行うことがみられます。その場合でも使用されるのは新樽ではなく古樽
新樽は樽のタンニンがリースリングの強い酸をより固くしてしまうからです。
また、大樽を使用することで、樽の下部に薄く広がった滓の成分がワインに溶け込んでうまみを増すという効果があるようです。

ペトロール香(石油香)の由来

 リースリングの特徴の一つに「ペトロール香(石油香)」と言われる、石油を思わせる香りがよく挙げられます。石鹸、菩提樹などの香りと表現されるものです。
特に、数年熟成されたリースリングは石油や火打石といった目立った特徴があります。

 特に、数年熟成されたリースリングは石油や火打石といった目立った特徴があります。

 リースリングのワインにペトロール香(石油香)が感じられることがあるのは何故でしょうか?

ぺトロール香

 このぺトロール香は、トリメチルジヒドロナフタレンという物質です。略してTDN。このTDNは熟成と共に生成される化学成分です。

 ブドウの果皮にはカロテノイドという成分が含まれます。
TDNは一般的にこのカロテノイドを元にして熟成の過程で作られます。
リースリングは果皮に加えて果肉にもカテノロイドを含むのでこのカロテノイドがより多いのです。

 カロテノイドは温暖な気候や強い日照環境であるほど多く含み、そのロテノイドは熟成に伴って穏やかにTDNとなってペトロール香を放つようになるのです。
 決して好ましい香りではないペトロール香は、次のような環境で増える傾向にあります。

・水不足の暑い環境下で生育したブドウを原料とする。
・特定の酵母を使って発酵させる。
・長い熟成を経る。
・比較的高い温度環境下で保管する

このため、栽培面、醸造、保管面から如何にカロテノイドからTDNを生成させないようにするかの管理が求められます。

地域ごとのペトロール香

 このように、ブドウの成熟とワインとしての熟成に依存してペトロール香が出てきますから、全てのブドウから造られるワインに出ておかしくはないですが、リースリングはよりぺトロール臭を作り易い品種です。特に、栽培地域の温度環境からは地域ごとの差が出てきます。

 概してニューワールドでは比較的若いワインから出てきます。一方で、ドイツやアルザスなどではある程度熟成を経たワインに感じられます。

 例えば、地中海性気候のオーストラリアのイーデン・ヴァレークレア・ヴァレーオーストラリア)ではブドウの生育環境の影響によって早い内からこの特徴香を感じます。

 一方で、ドイツやアルザスのリースリングでは、熟成もしっかり行うため熟成に伴って穏やかなペトロール香を感じさせます。

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