「リースリングを良く知る」シリーズ④
シリーズ①~③に続き、シリーズ④は世界各地で造られるリースリングの違いを生産地ごとに紐解きます。
生産地の気候・地形や醸造法の違いによって、リースリングワインの風味の輝き方が異なってきます。料理とのマッチングの参考にして下さい。
シリーズ①
〇なぜ、「最も高貴なブドウ品種」と言われるのか?
〇豊かな酸味がリースリングの特徴
〇3/13は「国際リースリングの日」
〇栽培が難しくドイツが最大の栽培国
〇名前の由来は「花が流れる」から
〇リースリングの歴史
シリーズ②
〇シャルドネとは親戚
〇シャルドネとの様々な違い
〇親としての様々な交配品種を生み出すリースリング
〇ワイン検定(ブロンズ)テキストのリースリング記載内容
シリーズ③
〇リースリングは万能選手
〇世界で最も熟成期間が長くとれる長命なワイン
〇長期熟成ができる理由
〇「樽」熟成は控えめでマロラクテイック発酵も行わない。
〇ペトロール香(石油香)の由来
〇地域ごとのペトロール香
シリーズ④・・・今回
〇世界の産地
〇味わいは地域ごとにどう違う?
・モーゼル(ドイツ)
・ラインガウ(ドイツ)
・アルザス(フランス)
・イーデン・ヴァレー(オーストラリア)
・クレア・ヴァレー(オーストラリア)
・ワシントン州(アメリカ)
・ニューヨーク州(アメリカ)
世界の産地
リースリングの主要産地はドイツ。特に、主要産地であるドイツの中で、モーゼルとラインガウは二大産地です。モーゼルとラインガウはリースリング栽培がブドウ畑の6割と8割を占めています。
また、フランスのアルザス地方もかつてドイツからリースリングが持ち込まれ今や主要品種となっています。
その他、新世界では、オーストラリア、アメリカが主な栽培地です。
味わいは地域ごとにどう違う?(旧世界:ヨーロッパ)
近年、ドイツでは伝統的な甘口のスタイルは減少して、辛口が半分を占めるようになってきています。また、ゼクトと呼ばれるドイツのスパークリングワインとしても作られています。
それでは、ドイツのモーゼルとラインガウ、フランス・アルザス地方の味わいはどのように違うでしょうか。
概して、ドイツのリースリングは繊細で伸びやかな酸味と透明感があり、アルザスは果実味とミネラル感の豊な味わいが特徴です。次に各地の味わいの違いを詳しくみてゆきます。
モーゼル(ドイツ)
〇気候と地形
モーゼルは栽培の北限にあり、気候は、ラインガウと比べても気温が低く降雨量も多い地域です。
しかし、ルクセンブルグとの国境沿いを流れ、蛇行するモーゼル川沿いの急斜面が太陽のめぐみを一身に受けています。特にリースリングの銘醸地があるモーゼル川の中流域の土壌は、主に石灰質の混在しないスレート(粘板岩)と呼ばれる花崗岩土壌です。
〇風味(ボデイ・香り)
香りは柑橘系の繊細で透明感のある香りです。軽めでアルコール度は低い(通常10%を超えない)ながらも、キレのある酸味、土壌に由来するミネラル感、エレガントな余韻の長さが特徴です。
なお、ボトルはワインの劣化を防ぐためスリムで緑色のボトルが多く用いられています。
ラインガウ(ドイツ)
〇気候と地形
ラインガウではライン川の豊富な水が年間を通じて温暖さをもたらしています。さらに、ライン川北岸に200~300メーターの南向き斜面が続いており、植えられているブドウ樹は十分な日照量が得られています。
〇風味(ボデイ・香り)
温暖な気候のため、モーゼルよりもふくよかで重厚なワインになります。
豊満で桃やトロピカルフルーツを感じるほど果実味豊かで力強く、しっかりとした酸味を持ち合わせています。大半は辛口ですが、高級な極甘口ワインも造られています。
モーゼルが緑色のボトルに対し、ラインガウのボトルは茶色が一般的です。
アルザス(フランス)
フランスの北東に位置し、ライン河を挟んでドイツとの国境沿いにあるため、歴史的にドイツの影響を強く受けてきました。
15世紀末にアルザスにリースリングがもたらされ、19世紀後半からは本格的に栽培されるようになりました。1960年代にはアルザスで最も作られるブドウ品種となり、今ではアルザスを代表するブドウ品種となっています。
ただ、アルザスではよりフランス的な醸造法を採用しているため、アルコール度数は高め(通常12%程度)になり、オーク樽ないしはステンレスタンクで長期間の熟成を行うことでより丸みを帯びています。
瓶の形もドイツと同じ細身のフルート型と呼ばれる瓶を採用しています。
〇気候と地形
ヴォージュ山脈のお蔭で、乾燥した気候で年間日照量も多い大陸性気候。その山裾にあたる丘陵地の、南を向いた斜面に植えられていて概ねドイツのリースリングに比べてブドウは完熟します。
土壌は花崗岩質から火山性堆積岩、泥灰岩質と複雑に織り成しています。
〇風味(ボデイ・香り)
スパークリングワインをはじめ辛口から極甘口のワインまで様々なスタイルのワインが造られていますが、どれも高い酸味と張りつめたミネラルが特徴で、香りは青リンゴや柑橘類で上品に纏められたアロマを持っています。
力強い果実味と酸味のバランスがとれた甘美なワインが造られています。
味わいは地域ごとにどう違う?(新世界:ヨーロッパ以外)
ヨーロッパ以外のニューワールドのリースリングの主要産地はオーストラリア、アメリカ。味わいはどう違うでしょうか?
オーストラリア
オーストラリア産リースリングはステンレスタンクを用いて低温で醸造されることが多く、若いうちはオイリーな味わいとリンゴや柑橘系、桃などの香りが多くあり、比較的長く熟成させたものは爽やかさと酸味のバランスを取っています。
地中海性気候の南オーストラリアのバロッサ地区にある中でも、日中と夜間の気温差が大きい、クレア・ヴァレーやイーデン・ヴァレーがリースリングの産地として知られています。
・クレア・ヴァレーは高い標高であり夏の日中はとても暑いけれど、夜には気温が大幅に下がって、日較差は30度にも及ぶ
・イーデン・ヴァレーは同じバロッサ地区にありますが、高度と風の影響で、冷涼な気候
酸はドイツやアルザスなどの伝統産地に比べて穏やかで、ボディの強さとエレガンスが共存。何より強い芳しさがあります。
・クレア・ヴァレーは高い酸を保ったまま、ゆっくりとブドウを熟させるため複雑性が高まったワインになります。
・イーデン・ヴァレーは辛口で高い酸をもち、ステンレスタンクで残糖を低く抑えたワインが造られています。
ワシントン州(アメリカ)
ワシントン州はオレゴンの更に北、カナダとの国境に位置し、日中の寒暖の差が大きい地域です。
主要産地のコロンビアヴァレーはカスケード・マウンテンが太平洋側からの湿った空気を遮断し乾燥しています。7月から9月の色付・成熟期には日照量がボルドーやナパを超えますが、秋に入ると日は急に短くなり、日較差も大きくなっています。
日中の寒暖の差が活き活きとした高い酸を造り出しています。辛口から甘口まで幅広く、すっきりとして軽いワインですが、寒冷地ならではの心地よい甘さと酸のバランスを備えています。
ニューヨーク州(アメリカ)
リースリングは今やニューヨーク州を象徴する品種となっています。
ニューヨーク州は冬は厳しい寒さ、夏はむし暑い地域ですが、アルザスよりは温暖で、オーストラリアより冷涼な気候です。
州にある大小11個の湖周辺のフィンガー・レイクスという生産地では、湖が夏は涼しい風を吹かせ、冬は寒さや霜から被害リスクを軽減する役割を担っています。石灰岩やミネラルを多く含んだ土壌は、酸の高い品種に絶好のパフォーマンスを与えています。
日中の寒暖の差が活き活きとした高い酸を造り出しています。辛口から甘口まで幅広く、すっきりとして軽いワインですが、寒冷地ならではの心地よい甘さと酸のバランスを備えています。