トレンティーノ

トレント・・・スパークリングワイン・シリーズ⑧

 スプマンテ・シリーズの第3回目は、トレントについて詳しく解説します。
産地、種類、使用ブドウ品種、製造方法、味わい、歴史、主な生産者などについて述べます。

トレントの産地

 トレントはトレンティーノ・アルト・アディジェ州南部のトレンティーノ地方で造られるスパークリングワイン(スプマンテ)です。
 
トレンティーノ・アルト・アディジェ州は、イタリアの大都市部ヴェローナから北へ100kmほどの距離にあるイタリア最北端の州です。オーストリア、スイスと国境を接していて、北部のアルト・アディジェ地方と、南部のトレンティーノ地方に分けられます。
 州のほとんどが山岳地帯で耕作可能地は少なく、森林が土地の70%を占めています。そして、州の真ん中を北から南にアディジェ川が流れています。
 気候は州の南北で異なり、トレントが造られるトレンティーノ地方は温暖な地中海性気候、アディジェ川中部の渓谷は雨が少ない大陸性気候、そしてアルト・アディジェ地方はアルプス性気候に変わります。しかし、北部でも渓谷を通り抜けるフォーンと呼ばれる温暖な南風によって寒さは和らげられ、ブドウ栽培を可能にしています。
 ぶどう畑が集中している山岳丘陵地帯は湿度が低く、日々の寒暖差が大きいため、ここでは酸味とアロマ感あふれるぶどうが収穫できます。

 スプマンテは、南部のトレンティーノ地方で作られ、DOCトレントと呼ばれています。このトレンティーノのブドウ畑は、1万ヘクタールで、イタリア全体のブドウ畑の約2%。年間約700万本イタリアのスプマンテの約8%を生産しています。トレントスプマンテはほとんどが標高350m以上の畑で造られています。
 ちなみに、DOCトレンティーノはスティルワイン(赤、白、ロゼ)の生産地です。一方で、DOCトレントはスプマンテのみの銘柄名です。

トレンティーノ=アルトアディジェ州
トレンティーノ=アルトアディジェ州

DOCトレント
DOCトレント

DOCトレントの味わいの特徴

 DOCトレントは瓶内2次発酵のスプマンテの銘柄です。
山から吹き降りる冷涼な風と、白い山肌に見られる石灰質の土壌が生むミネラル感と酸が印象的な、ディナー向きのスプマンテです。
 香りは爽やかなハーブや柑橘、リンゴ、洋梨のアロマ、熟成によるナッツやイースト香もあります。
味わいは、トロピカルなニュアンスもあるフランチャコルタと対照的で、ミネラルと酸が通るキリッとした「山のスプマンテ」です。

トレントの歴史

 トレンティーノ=アルト・アディジェ州のうち北部のアルト・アディジェは一次世界大戦時はオーストリアの領土でした。このため、現在もドイツ系イタリア人の住民層が多く、ドイツ語とイタリア語が話され、州で造られたワインはドイツ語・イタリア語2か国語を両方併記していました。
 このような背景から、ワインはドイツ人気質な几帳面さを反映した、きちんとしたワインを造りをします。イタリアで一番最初に近代的なワインの醸造技術を導入したのも、この地区です。
 トレンティーノ・アルト・アディジェ州のスパークリング造りは、1902年にシャンパーニュ地方から帰国したジュリオ・フェッラーリによって始まりました

トレンティーノ

製造方法

 トレントのスプマンテはメトド・クラシコ(シャンパーニュ方式)で作られます。ステンレスタンク内で発酵させたベースワインを、瓶に詰め二次発酵させます。瓶の中ではゆっくり発酵し、その後、瓶内で熟成します。
 このような瓶内二次発酵で造られたスプマンテは、きめの細かい泡となります。瓶内熟成期間は最低15か月です。

ぶどう品種

 トレンティーノ・アルト・アディジェ州の主なブドウ品種は、白ワイン用が全体の65%で、標高の高い畑では、ピノ・グリージョ、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどのフランス種が占めています。
 しかし、この地はかつてオーストリアの領土だったこともあり、ケルナー種、シルヴァナー種といったドイツ系白ワイン種ブドウ品種が栽培されています。
 スパークリングワインの産地であるトレントDOCでは、シャンパーニュと同じシャルドネ、ピノ・ノワール(ピノ・ネーロ)、ムニエに加えてピノ・ビアンコを使うことができます。

トレントの種類

●熟成期間別の分類(5種類)

〇ノン・ヴィンテージ NV
複数ヴィンテージのブレンドです。各ワイナリーでリザーブワインを使いブレンドすることで安定した味わいと品質になります。瓶内熟成期間は最低15か月です。


〇ミレジマート Millesimato
イタリア語でヴィンテージの意味です。ミレジメ、ミレジムとも言われます。ブドウの出来が良い年のブドウのみで造られ、天候、品質を鮮やかに映し出す香りや味の個性がある格上のワインです。


〇リゼルヴァ Riserva
DOCトレントの規定での瓶内熟成期間は最低15か月ですが、それ以上に熟成しているものがリゼルヴァと名乗れます。

●甘辛度別の分類

主流の甘皮度はブリュット(辛口)です。甘辛度は瓶内熟成後、デゴルジュマン(オリ抜き)した後、ドザージュ(イタリア語はドザージョ Dosaggio、補糖)するリキュールの量で甘さを決めます。
ドサージュ(糖分量調整)の量により、下記のように分類されます。
パ・ドゼまたはノン・ドザート 1リットル当たり糖分3g以下
エクストラ・ブリュット 1リットル当たり糖分0g~6g
ブリュット 1リットル当たり糖分12g以下
エクストラ・ドライ 1リットル当たり糖分12g~17g
ドライまたはセック 1リットル当たり糖分17g~32g
デミ・セック 1リットル当たり糖分32g~50g

この分類は、シャンパンと同じです。
(ただし、シャンパンには、50g以上の「ドゥー」があります)

 

主な生産者

・フェラーリ
 創業は1902年
。ジュリオ・フェッラーリがイタリアで初めてシャルドネを植えたことにより、シャンパーニュ方式のスプマンテ造りが始まりました。トレント・スプマンテの代表銘柄でその品質は世界中で高く評価されています。アメリカのエミー賞の公式スパークリングワイン、国内外のイタリア大使館の公式晩餐会のアペリティフにも必ず使用されていて、DOCトレントのスプマンテ全体の85%にあたる生産量です。
 「フェラーリ」は1800年代からの古い良質な畑を所有していて、ぶどう畑は、その品質を保つべく環境に配慮したトレントの山岳部の高斜面にあります。そのため、フェラーリの生産者ルネッリグループの畑は、無農薬・除草剤不使用の「完全オーガニック畑」の認定を受けています。
 「ペルレ」「ジュリオ・フェッラーリ リゼルヴァ・デル・フォンダトーレ」がフェッラーリの代表銘柄。創業者の名ジュリオ・フェッラーリを冠しています。

ferrari maximum

・ロータリ(Rotari)社
 ロータリ(Rotari)社は1977年設立。1,600の農家が株主となり運営している生産者協同組合で2,600haの広大な畑から年間300万本を生産しています。アメリカや北欧では、シェアNo.1を獲得するほどの人気を誇っています。

・カヴィット(Ca’vit)社
 1950年設立のワイン生産者協同組合連合。州全体の65%にあたるブドウ畑を所有しています。

「ロータリ タレント ブリュット」と「カヴィット アルテマージ・ブリュット・ミレジマート」 トレント
トレンティーノ
よろしかったらフォローして下さい。