カーヴとピュピトル

古代ローマ人の造ったカーヴ(地下窟)がシャンパンを造る・・・シャンパンのそうだったのか!④

(古代ローマ帝国の石灰岩の採掘がシャンパンを造る)

 シャンパーニュ地方は古来戦争の歴史の中にあり、そのたびにブドウ畑は荒廃しワイン造りは停滞しました。しかし、征服されたこの地において期せずして将来の遺産となったものがあります。それは古代ローマ帝国がこの地に残したカーヴ(地下洞窟)です。

 紀元前1世紀の終わりまでにローマ人がガリア全域を征服し、シャンパーニュ地方も帝国に併合されました。しかし、幸いにもローマ人はこの地を破壊ではなく、文明化への舵取りをしました。
 ローマ人は、最初のブドウ畑を拓き、神殿や道路の建設のために石灰岩を切り出し、特に道路作りに精を出しました。各地のガリア人の諸侯を支配下に置くために主要都市に駐屯軍を置き、反乱軍の鎮圧に駆け付けられるように道路を整備したのです。道路は舗装建設のはしりで石灰岩や白亜を多く使用しました。
 白亜はランス市周辺の地下深い所で採掘され、現在ランス市の地下に広大な洞窟を張りめぐらせています。


カーヴとピュピトル
カーヴとピュピトル

(白亜紀の石灰岩)

 英国の東南部一帯からフランスの北西部や中央部の地下は石灰岩で形成されています。
 これらの地域は9900万年から6500万年前の白亜紀には海底でした。海にはココリスという微細藻類があり、彼らは殻を持ち死ぬと海底に堆積して行きました。数百万年かけて堆積の後、石灰岩(チョーク))になりました。やがて海底は大気温度の変化や地殻変動を経て現在のように陸地となり石灰岩が地上に露出するようになったのです。

 英国のドーバー海峡周辺にある厚く白い断崖は有名ですが、シャンパーニュ地方のカーヴはこの白亜紀の石灰岩です。

セブンシスターズ(英国・ドーバー海峡)
セブンシスターズ(英国・ドーバー海峡)

(石灰岩採掘場がカーヴに利用された歴史)

 ローマ人が残した石切り場は何世紀後になって再発見されました。
巨大なクレイエル(石灰岩の洞穴)に変身して、今日シャンパンを貯蔵、熟成させるために使われています。
 この古代のクレイエルに加えて、18世紀末から19世紀末まで掘削が続きました。
そして、地下は石灰層で土木工事がしやすいため、長いギャラリー(地下道)が作られました。その一部は水路や鉄道に直結してもいますが、多くは現在醸造、貯蔵の場所として使用されています。

 ちなみに、クレイエルとギャラリーの違いですが、クレイエルとは、3世紀以降石灰岩を採り出した地下石切り場のことで、シャンパーニュの醸造に再利用されているもの。
ギャラリー(地下道)は、クレイエル間を結ぶために後からつけ加えられた円天井の地下道で、ワインの貯蔵と熟成のための整備が施されました。
これらを総称してカーヴと称します。

(巨大なカーヴ)

 ランスのサン・ニケーズの丘地下に約370のクレイエル全長25km歴史的丘陵地下に10km。最も長いのは、ヴーヴ・クリコのクレイエルで全長24km。高さではルイナールのクレイエルが 50メートルと最も高いものです。

  地下遺産であるカーヴは史上最大の規模を誇り、石切り場1,000か所以上、採掘された石灰石量100万立方メートル以上に及ぶと言います。
 今日、これは産業遺産として重要な役割を果たし、現在、数千万本に及ぶボトルがこの地区の地下石灰層内に貯蔵されています。
一年中、適度な冷温(11~12℃)と湿度(90~95%)を保ち、シャンパーニュの熟成に貢献しているのです。

カーヴと樽
カーヴと樽

「シャンパーニュ地方の心弾けるシャンパン貯蔵庫8選」

メルシエ:エペルネ、全長18km、地表から30mの地下
モエ・エ・シャンドン:エペルネのシャンパーニュ通りの下に、全長28km
G.H.マム:ランス、7~14m地下
テタンジェ:ランス、地下18m、世界遺産リストに登録されている場所の一つ
ヴーヴ・クリコ:ランス:全長24km
ランソン: ランス:全長7km
ルイナール:地下38m、天井高さ50m
ポメリー:ランスの大聖堂からすぐそば、全長18km、120の採石場、現代アートの展覧会の開催

カーヴとピュピトル
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