宇宙

宇宙での泡、泡と香り、口紅と泡、ビールの泡との違い・・・シャンパンの表と裏側③

(宇宙でシャンパンは泡立つ?)

 泡は液面に向かって上昇するものですが、もし無重力の宇宙でシャンパンを飲んだらどうなるでしょうか?
  泡は立たないでしょうか?
  それとも、泡は立つが浮遊する?

 答えは、
「泡はできます。そして泡は上昇することなくその場にとどまり、どんどん大きくなります。そして、泡は液体に置き換わって溢れだします」

 気体の泡は地上では上昇しますが、これは重力があるからです。しかし、重力がない環境では上昇することはありません。泡自体は出ますし、液中のCO2が泡に入ってゆくことは地上での状況と同じですので大きくなっていきます。

 それでは、月や木星では泡はどうなるでしょうか?
      泡の大きさや上昇スピードは同じでしょうか?

 答えは、
「重力の大きな木星では上昇速度は速く、泡は小さなものとなる」です。
 木星は重力が地球の100倍です。このため浮力も大きく上昇速度が速くなります。速度が速いと液面に達する時間は短いのでCO2を取り込めきれず、泡は小さいものとなります。

 月ではその逆です。「重力の小さな月では上昇速度は遅く、泡は大きくなります」。月で宇宙飛行士がシャンパンを飲むと大きな泡がゆっくりと立ち上がるのを見ながら飲むという事となります。

 なお、シャンパン・メゾンのG.H.MUMMが特殊なボトルとグラスで無重力の環境でも飲めるようにした「Grand Cordon Stellar」というシャンパンを発表してます。宇宙飛行士の訓練の無重力空間の中で試されている様子が紹介されています。ここでは、ボトルの口にあるリングに工夫がされていて、液体ではなく泡状になっています。考えたものです。

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シャンパンの一列に立ち上る泡
シャンパンの一列に立ち上る泡

(シャンパンは白・赤ワインより香りを感じやすい)

 液面に上昇した泡は、ほどなくしてはじけて割れます。泡の寿命はグラスに注いだ直後は1秒もありません。数千もの金色の滴が一瞬にしてはじけます。

 注いでから5~20秒で泡の寿命は3~5秒。わずかな時間ですが泡は液面に球状に残った後、はじけます。そして、はじけた泡が割れる際に運んできた香りの成分が飛び散ります。
はじけた滴は秒速数m/sという速い速度で数センチの高さにもなります。グラスに近づいた鼻がこの香りを容易に嗅ぐことになります。

 通常の白・赤ワインでは香りを嗅ぐのに、グラスをスワイプ(ぐるぐる水平に回す)して香り成分をグラス内に放出させますが、シャンパンではスワリングせずとも泡が香りを豊富にグラス内に充満させます。ですからシャンパンは白・赤ワインよりも香りを容易に感じやすいのです。

(口紅の口でシャンパンを飲むと泡が消える)

 液面が一面の泡で満たされているシャンパンを飲むとき、口紅をした口で飲んだり、ピーナッツを食べながら飲むとシャンパンの泡ははじけるのを止め、あわがほどなく消えてしまいます。
 その理由は口紅やピーナッツに含まれる脂肪が原因です。泡が液面にある時、泡の表面には界面活性分子という物質が一面に泡を覆って泡を固くしています。芳香成分にもなったアルコール以外の有機酸などの成分です。

 泡の表面に脂肪が介在すると脂肪が割り込んできて表面を薄くしてしまい、ついには泡を割ってしまいます。口紅やピーナッツが泡を消すのはこういう作用が働くからなのです。液面にある泡の寿命は10~20秒です。短い時間ですが脂肪分はこの寿命をさらに短くしてしまいます。

(ビールの泡とシャンパンの泡の違いは?)

 同じ炭酸ガス含有のアルコール飲料でも、シャンパンとビールではその泡立ち方や泡の持続性が違います

 まず泡立ち方ですが、シャンパンはガス圧が約5~6気圧とビールの約2気圧よりも高いため、初期のエアスポットでの泡の発生頻度が異なります。ガス圧が高い分、液内のCO2が泡に多く取り込められ、大きくなって泡としてエアスポットから離れて立ち上るペースが速いです。シャンパンは1秒間に30個もの泡が立ちあがるのに対して、ビールでは10個程度だそうです。

 また、泡が上昇するスピードについてもシャンパンの方がビールより早いのが、よく見るとわかります。これは、泡の表面の性質の違いがあるためです。ビールには界面活性分子が泡一面に付着し、表面が「固い」剛球の球体になっています。これは上昇にブレーキを掛ける球体です。

 一方でシャンパンの泡は小さなうちは界面活性分子が泡一面に付着した剛球ですが、ガス圧が高いため泡が短時間で大きくなります。この状態では泡の膨張するペースが、界面活性分子による表面を固めるペースより早くなります。その結果、泡の剛球状態は表面が滑らかな「流体球」になっていきます。その結果、泡の上昇に対して抵抗が少なくなりシャンパンはビールの泡に比べて早く立ち上ることになるのです。

 さらに、泡の持続性についてもビールは泡が麦芽由来のタンパク質(起泡タンパク)とホップ由来の苦み成分の影響で、泡立ってから数分間程度持続する性質があります。ですから、ビールの液面には泡がこんもりと積み重なります。一方、シャンパンは泡の持続性はほとんど無く、出来た端からぱちぱち音を立ててはじけていきます。

ビールの泡
ビールの泡
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