アイキャッチ④メルロー

第4回 メルローのワイン産地(フランス・イタリア)・・・「メルローを良く知る」シリーズ④

「メルローを良く知る」シリーズ④

 第4回以降のこのシリーズでは、世界各地のメルローの「栽培状況」と造られる「ワイン」を具体的に紐解きます。主なブドウ栽培産地の動向や特徴、国・地域ごとの風味を解説します。第4回は最大産地フランスイタリアです。主なブドウ産地の動向や特徴地域ごとワインの特徴です。

シリーズ① ぶどう「メルロー」の素顔
 〇「名脇役」メルロー・・イメージ
 〇メルローが名脇役である理由・・・ブドウの実像
 〇健康的にすくすく育つ青年
 〇多くの人に愛される中庸の好青年
 〇演じれば協調性のある名脇役、時に主役もこなせる
 メルロー(Merlot)・・・ワイン検定(ブロンズ)記載内容

シリーズ② 世界のメルローの起源・親族
 〇起源は鳥の「ツグミ」
 〇義兄弟の多いメルロー・・・親族関係
 〇黒ブドウの中の中庸の品種
 〇世界で造られるメルロー・・・栽培面積

シリーズ③ ワインの風味と世界の産地
 〇最大の長所=口当たりの良さ
  ・・・一般的な風味
 ・ワインの色、香り、味わい
 〇気候の違いによる風味の変化
 〇ニューワールドの風味
 〇熟成による風味の変化
 〇世界の主なワイン産地

シリーズ④ メルローのワイン産地(フランス・イタリア)
 〇フランス
 〇イタリア

シリーズ⑤ メルローのワイン産地(米国・スペイン・チリ)
 〇米国
 〇スペイン
 〇チリ

シリーズ⑥ メルローのワイン産地(ニュージーランド・日本)と料理とのマッチング
 〇ニュージーランド
 〇日本
 〇料理とのマッチング

フランス

 メルローは先に述べたように、フランスが世界で4割の栽培面積を誇っています。そしてフランスの中でもボルドーで一番多く栽培されています。

 ボルドーには、3本の川があります。ピレネー山脈水系のガロンヌ川、中央高地水系のドルドーニュ川、2つの河川が合流したジロンド川です。

メルローの栽培面積(国別・2016年)

 このうちのジロンド川の上流から下流を見て左側を左岸、右側を右岸と呼びます。このうち右岸が粘土質土壌でメルローが特に多い栽培地です。

 右岸エリアではメルローは主要品種としてカベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドされ、ボディをつくる役割を担っています。

 方や左岸エリアでは、カベルネ・ソーヴィニヨンを主要品種としてメルローカベルネ・フランやとブレンドしてバランスを取ることが多いです。

ボルドーの右岸と左岸

 右岸のポムロール地区サンテミリオン地区では、メルローの栽培比率がとても高く、「シャトー・ペトリュス」、「シャトー・シュヴァル・ブラン」、「シャトー・ルパン」などの世界最高峰のワインを生み出しています。
 色合いは濃いルビー色で熟したプラムの芳醇な香りの濃厚な赤ワインです。口当たりは柔らかく、渋味・酸味が感じられます。アルコール分も多く味わいが深く、熟成に耐えられます。高品質のものは30年も熟成が可能です。

サンテミリオンとポムロール

 ただし、5千を超えるボルドー地方の生産者の中で、格付けワインの生産者は、サンテミリオンで18シャトー、ポムロールで21シャトーにしかすぎません。

 また、栽培面積はサンテミリオンで5,331haですが、ポムロールでは792haに留まります。(2018年)

 このため、例えば、メルロー100%で造られるポムロールの「シャトー・ペトリュス」などは僅か11.4haのごく小さなぶどう畑であり、生産本数は例年非常に少なく、ほぼ市場に出回りません。

サンテミリオン

シャトー・ペトリュス
シャトー・ペトリュス
ペトリュスとルパン(ポムロール)
ペトリュスとルパン(ポムロール)

ボルドー以外

 なお、メルローはボルドー以外では隣の南西地方ラングドック地方などでも栽培されています。
南部のラングドック=ルーシヨンで、1980年前後から、ヴァン・ド・ペイクラスのワインでメルローを使ったセパージュ・ワイン(※)が多く作られるようになっています。
(※)ラベルにブドウの品種名が明記されたワイン

イタリア

 地品種の宝庫でありながら、意外にもメルローの栽培面積が大きいのがイタリア。
メルローの2016年の栽培面積は2.4万haです。
イタリア産のブドウの栽培面積は39万haですが、サンジョベーゼ6.8万ha、トレッビアーノ・トスカーナ(3.5万ha)、モンテプルチアーノ(3.2万ha)、カタラット・ビアンコ(2.8万ha年)に次ぎ5番目に多く栽培されています。
黒ブドウ品種の中でも3番目の栽培面積です。

イタリアのブドウ別の栽培面積(メルロー)

 メルローは比較的冷涼な場所で育つため、イタリア北東部(フリウリ、トレンティーノ、ヴェネトの各州)で造られています。
 フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州では19世紀から栽培されていて、ヴェネト州などでは、日常的に楽しめるワインとして、メルローを使ったIGPワインが造られています。その口当たりはシルキーで飲みやすいものです。
 さらに中部のトスカーナ州ウンブリア州でも逸品が造られています。

 イタリアのメルローワインは、豊かな果実味を持つフルーティなものがそろっており、ブレンドに加えると酸を和らげ丸みを与えるので、サンジョベーゼの良いブレンドパートナーとしても重宝されています。

イタリアの主なメルロー産地

 また、トスカーナ州のボルゲリでは、スーパータスカンにメルローを使用しています。
 メルロを含む国際品種の産地として脚光を浴びたのが、ボルゲリ地区の中のマレンマ。粘土と砂利質の広がるこの地区はボルドーに気候が似ていることもあり、メルロもよく育ちます。DOC/Gの枠を超えた高品質な「スーパータスカン」は1970年代以降一世を風靡しました。

 カベルネ・ブレンドの「オルネライア」で有名なワイナリー、テヌータ・デル・オルネッライアのメルロ100%の「マッセート」は、イタリア最高峰のメルロです。

 さらに、ボルゲリの近郊東に位置するスヴェレートではカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローのブレンドワインやメルロー単一の高品質ワインも造られています。

トスカーナ
トスカーナ
「レディガフィ( 2020・トスカーナ)」と「マッセート (Ornellaia Masseto・ボルゲリ)
「レディガフィ( 2020・トスカーナ)」と「マッセート (Ornellaia Masseto・ボルゲリ)
アイキャッチ④メルロー
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