ペドロ・ヒメネスのオレンジワイン
珍しいブドウ品種で造られた「オレンジワイン」を見つけました。
「ペドロ・ヒメネス」というブドウ品種で造られたオレンジワインです。
ペドロ・ヒメネスはスペインのシェリーを造るブドウです。
それも甘口のシェリーです。
シェリーって酒精強化ワインで強いアルコール度数のワインですね。
ブドウ名のペドロ・ヒメネスは聞いたことがないかもしれませんが、
シェリーは聞いたことがありますね。
シェリーの正式名は「ヘレス・ケレス・シェリー(Jerez-Xerez-Sherry)」 長い名前ですね~。
これはスペイン語、フランス語、英語でそれぞれヘレスを意味する地名を並べたんです。
ペドロ・ヒメネスは、スペイン南部のアンダルシア地方が主要産地です。
でも、このワインはスペイン産ではなくチリ産。
チリは美味しい白・赤ワインをたくさん造っていますが、オレンジワインも作り始めました。
このワインは、2人のイタリア人がチリの最北端のエルキ・ヴァレーで造っています。
フローラルな香り、心地よい果実味が感じられます。
少しのタンニンが調和して美味しいワインです。
オレンジワインとは?
果物のオレンジから造られるフルーツワインだと勘違いしている人がいるかもしれませんが、
白ワイン用のブドウで造られるワインの一種です。
オレンジがかった色合いから「オレンジワイン」と呼ばれています。
「アンバーワイン(琥珀色のワイン)」という呼び方もあります。
オレンジワインはどのように造られる?
ワインは、白・赤ワインも収穫したブドウを発酵させて造りますが、 「ブドウの種類」と「製造手順」に違いがあります。
赤ワインは、黒ブドウを使って果皮や種子ごと発酵させてその液体を圧搾し、 樽やタンクに詰めて熟成させ造ります。
一方で、白ワインは、白ブドウをまず圧搾し、 その後に果汁を発酵させて造ります。
発酵が先か、絞るのが先かの違いです。
それに対して、オレンジワインは、 白ブドウを使って、まず圧搾し、その後に発酵させて造ります。
つまり、白ブドウを赤ワインの製造法で造るのです。
白ワインと違い、オレンジ色が付く理由は、
黒ブドウほどではないですが、 白ブドウの皮にも色素成分が含まれているからです。
世界で最も歴史あるワイン
オレンジワインは世界で最も歴史のあるワインです。
今、黒海の北にあるウクライナがロシアからの侵攻を受けていますが、黒海の東には、ジョージアという国があります。
このジョージアは8,000年前からブドウを栽培し、ワインを醸造していたとされる 「ワイン造り発祥の地」でオレンジワインの原点です。
長年ソ連に属していたのですが、 1991年に独立して「グルジア」から「ジョージア」に名前を変えました。
独立してソ連へのワインの供給地という、くびきから解き放たれて、 オレンジワインも世界に広がっていったのです。
その後、90年代後半に、イタリアを拠点に造られたオレンジワインが拠点になり、 ヨーロッパ各地でも造られるようになりました。
そして、今や、アメリカ、オーストラリアなど、世界各地でオレンジワインが造られています。
日本でも「甲州」というブドウ品種を使って造られていて、10年ほど前にはオレンジワインが世の中の注目を集めました。
そして、最近チリでも造られてようになったのです。
この辺りは、「ワイン検定」の勉強で知ることができます。
オレンジワインの味わいは?
これに対して 、オレンジワインは、
白ブドウを使っているので、そのブドウの特徴をベースに熟れた果実、熟成したブーケ(香り)があり、
赤ワインのような渋みと旨味も感じられます。
そのブドウの違いや作り手の違いから
・「軽くエレガントな味わい」のもの
・「芳香性豊かで華やかな味わい」もの
・「重く力強い味わい」のもの まで幅が広いです。
このように、オレンジワインは 従来の赤、白、ロゼとは別の4番目のタイプともいえるでしょう。
パワフルなものから、熟れた果実をかじったようなフレッシュなものまで、 様々なスタイルがあります。
オレンジワインはいろいろなブドウ品種(白)で作られている
それぞれの味わいを作り出すブドウ品種は何か?
具体例で、味わいごとに3タイプに分けてみます。
○「軽くエレガントな味わい」
ピノ・グリ、グルナッシュ・グリ、甲州などグリ系品種
○「芳香性豊かで華やかな味わい」
ゲヴェルツトラミネールやミュスカなどのアロマティック品種
○「重く力強い味わい」
フリウリ(イタリア)を代表する品種、リボッラ・ジャッラ
ジョージアの土着品種、ルカツッテリなど でしょう。
しかし、様々な白ブドウでも造られています。例えば、
・ シュナン・ブラン、ピノ・グリ、アルバリーニョ、リースリングなど、フランス、イタリア、スペイン、ドイツを母国に持つ品種
・オーストリアを代表するグリューナー・ヴェルトリーナー
ナチュラル派のワイン
オレンジワインが世に広まった背景には、 味わいの広さの他に、もう一つの世界的な流れがあります。
オレンジワインは、その造り方の初期過程で、果皮や種子と共に醸される際にタンニンが抽出されます。
このタンニンにはワインの酸化を防止する働きがあり、 亜硫酸塩(酸化防止剤)の添加が少なくて済みます。
この自然な手立てでワインを造るナチュールワインとして 「自然派の造り手たち」と「ナチュラルなワインを好む飲み手」 の支持を得たのです。
料理とのペアリング(マリアージュ)
オレンジワインは、様々な白ブドウ品種で造られるため、味わいの幅が広いです。
このため、料理とのペアリングも多様です。
具体的にマリアージュの例を挙げると、次のようになります。
○サラダやゆでただけの魚介類、パスタ、サンドイッチ、ハンバーガーなどの軽食には、
「軽くエレガントな味わい」のオレンジワイン
○インド料理、韓国料理、その他のエスニック料理のように スパイスやハーブの香りが強い料理
「芳香性豊かで華やかな味わい」なオレンジワイン
醸し(果皮と果汁を一緒にして発酵させること)による複雑な香味が、
幅広い料理とマッチします。
そういえば、ワインを扱って人気になった漫画「神の雫」にも
ウンブリア自然派パオロベアのオレンジワイン「アルボレウス」が 描かれていました。
オレンジワインを飲む温度とグラス
一般にオレンジワインは冷やしすぎないほうがその真価を発揮します。
しかし、記述しましたように、様々なタイプがありますので、
白ワインに寄せたフレッシュでスムースなタイプは冷やして飲むのが良いです。
グラスの形状は原則としては白ワインと同じ扱いで良いでしょうが、
香りがいかにも複雑そうだったら大ぶりのボウル(一番太いグラスの胴体部分)の
グラスに替えたら良いと思います。
読んでいただき、感謝します。