ピノ・グリとピノ・ノアール

ピノ・ノワールのルーツとワインの特徴・・・「ピノ・ノワールを良く知る」シリーズ②

ピノ・ノワールを良く知る」シリーズ②

 第2回目はこのシリーズでは、ピノ・ノワールのルーツを辿ります。世界には様々な産地がありますが、造られるワインに共通した特徴について記載します。製造上の特徴や色合い、香り、風味についてわかりやすく紐解きます。

シリーズ① 「ぶどう「ピノ・ノワール」の素顔

〇ブドウなのに「黒い松ぼっくり」・・・名前の由来
〇寒冷地で育つ小顔の貴公子・・・ブドウの特徴
〇育て方が難しい貴公子・・・ブドウの特徴
〇人気の貴公子にも辛い事情がある
    ・・・大量には栽培されていない
〇気難しいピノ・ノワール
    ・・・大量生産に向かない理由

シリーズ② 「ピノ・ノワールのルーツとワインの特徴

〇多くのブドウ品種のルーツの一つ
    ・・・ピノ・ノワールの家系図
〇別名の宝庫ピノ・ノワール・・・シノニム
〇ワインは繊細で高貴
  ・・・ピノ・ノワールは上品なワインを造る
〇ワイン検定(ブロンズ)記載内容(ブロンズ)

シリーズ③ 「ピノ・ノワールの世界の主なワイン産地とフランス

〇世界の主なワイン産地
〇【フランス】ブルゴーニュ地方
〇シャンパーニュ地方
〇アルザス地方・ロワール地方

シリーズ④ 「ピノ・ノワールの主要産地(米国・ドイツ)

〇【米国】カリフォルニア、オレゴン
〇【ドイツ】バーデン、ファルツ

シリーズ⑤ 「ピノ・ノワールの主要産地(ニュージーランド・イタリア)

〇【ニュージーランド】セントラル・オタゴ、マーチンボロ他
〇【イタリア】トレンティーノ・アルト・アディジェ他

シリーズ⑥ 「ピノ・ノワールの主要産地(オーストラリア・チリ・日本)

〇【オーストラリア】ヤラ・ヴァレー他
〇【チリ】サン・アントニオ・ヴァレー他
〇【日本】北海道他
〇料理とのマッチング

多くのブドウ品種のルーツの一つ・・・ピノ・ノワールの家系図

 ピノ・ノワールは4世紀頃には栽培が行われていたともいわれる歴史のあるブドウです。また、突然変異しやすい品種です。このため、ピノ・ノワールと係累をもつブドウ品種は大変数多くあります。たとえば、次に示すような具合です。

ピノ・ブランピノ・グリ(写真)はピノ・ノワールの突然変異で生まれたといわれ、皮の色は違いますがDNAは同じです。この2つの品種は、DNAが同じという意味では兄弟以上の関係です。

シャルドネ、アリゴテ、オーセロワ、ガメイ、ミュスカデ(ムロン・ド・ブルゴーニュ)は、ピノとグエ・ブランの交雑から生まれました。これらのほか11種が子品種として確認されています。

ピノ・グリ

ピノタージュ (Pinotage) は、1925年に南アフリカでピノ・ノワールとサンソー の交配で生まれました。

・ソーヴィニヨン・ブランやミュラー・トゥルガウ、グリューナー・ヴェルトリーナーはピノ・ノワールの孫品種、さらにカベルネ・ソーヴィニョンやシラーはひ孫品種ということもDNA解析などの研究から明らかに、もしくは、推定されています。

ピノ・ノワール

別名の宝庫ピノ・ノワール・・・シノニム

 シャルドネが今や世界中で統一の名前「シャルドネ」と呼ばれているのとは対照的に、ピノ・ノワールは世界各地で別名(シノニム)で呼ばれています。古くからある品種なので、各地での呼び名が多様にあります。例えば、

 ・ドイツの「Spatburgunder シュペートブルグンダー」。
 ドイツには800年以上前にブルゴーニュからピノ・ノワールが持ち込まれ、栽培されてきました。そしてドイツの地に適応し現在に至っています。
・アルザスやドイツの一部では「Clevner クレヴナー」
・イタリアでは「Pinot Nero ピノ・ネロ」
・オーストリアでは「Blauburgunderブラウブルグンダー」「Blauer Spätburgunderブラウアー・ブルグンダー」
・フランス・ジュラ地方では「Gros noirienグロ・ノワリアン」
・スペイン・カタルーニャ州では「Pinot negreピノ・ネグレ」
・アメリカ合衆国では「Black Burgundyブラック・バーガンディ」

ワインは繊細で高貴・・・ピノ・ノワールは上品なワインを造る

 ピノ・ノワールで赤ワインを造る場合は概ね単一品種での醸造です。
単一品種で醸造されている理由は、価値「高貴な繊細さ・エレガントな味わい」にあり、その味わいはピノ・ノワールのみの醸造によってこそ創り出すことができると考えているからです。

 また、テロワールが強く反映される品種であり、造られるワインは地域ごとに大きく異なっています。さらに、発酵の手法酵母の種類に対して敏感でもあるため、醸造所によっても異なったワインが生まれます。このように気候や土壌、生産者のスタイルで味わいは変わっています。

 しかし、どのようなピノ・ノワールワインであれ、共通する特徴があります。
繊細で複雑な香り高い酸味の果実味とのバランス、マイルドな渋みが特徴です。

ピノ・ノワールはこんな上品なワインになります。それでは、香り、味わいなどの要素を個々に見てゆきましょう。

①ワインの色・・・淡い色の貴公子

 ピノ・ノワールは果皮が薄いため、果皮に含まれ色素のもとになるフェノール化合物の含有量が少なくなります。
他の黒ブドウ品種と比べてアントシアニン (色素) が少ないので、他品種の赤ワインの色よりも淡いものになります。他の赤ワインが紫~濃い赤が多いのに対し、ピノ・ノワールの高品質なものは明るく透明度のある赤色が多くなります。

ワインの香り・・・華やかな貴公子

 ピノ・ノワールはボリューム感のある華やかな香りが他の品種と比べて特徴的です。しかし、熟成の度合いによって香りには幅が出ています。
 若いワインは、チェリーやラズベリー、イチゴといった赤い果実の香りを感じさせます。
一方で、熟成を重ねたものは複雑な香りを備えたワインになります。例えば、皮革や土、きのこ、紅茶のような熟成によって生まれる香り(ブーケという)を伴ってきます。

③ワインの風味・・・上品な貴公子

 味わいでは渋みよりも果実由来の心地良い酸味がピノ・ノワールの特徴です。また、アタック(口当たり)は軽やかで、タンニンが強くなく渋みがマイルドなミディアムボディの風味がピノ・ノワールの真骨頂です。重い赤ワインが多い中では貴重な存在です。

 ワインは一般的に、酸味のボリュームが高く、かつ、果実味とのバランスがとれているとき、上品な味わいと感じます。ピノ・ノワールは味わいにおいて「上品な赤ワイン」の代表格です。

香り(若いワイン)ボリューム豊かで華やかさがある。スミレなどの花の香り。チェリーやラズベリー、イチゴ
香り(熟成したワイン)皮革や土、きのこ、紅茶、クローブなどの香り
アタック(口当たり)上質な果実味。アルコールが高くとも軽すぎず重くない
渋味(タンニン)穏やかなタンニンで渋みは弱い
酸味心地よい上質な酸味。高いものが多いが温暖な地域のものは低くなる
ピノ・ノワールの風味の一般的な特徴

ピノ・ノワール(Pinot Noir)・・・ワイン検定(ブロンズ)記載内容

どんなブドウ?

・粒の大きさは中庸で、薄い果皮が特徴の赤ワイン用ブドウ品種です。フランスのブルゴーニュ地方が原産です。

・突然変異しやすいブドウで、果皮の色が白に変異したピノ・ブランやピンクに変異したピノ・グリもワイン用の国際品種になっています。

・果皮が薄いため病気に弱く、また早熟品種のため、ブドウが一気に熟す暑いエリアでは、特徴である繊細で華やかな香りを失いやすいなど、とても栽培が難しい品種です。

・ワインは赤いベリーやチェリーの果実の香りに、バラの花やスパイス、紅茶、なめし皮といった複雑で華やかな香りで、渋味は少なく、エレガントな酸味を中心とした繊細な香味が特徴です。

・フランスのブルゴーニュ地方やドイツでは繊細でエレガントな味わいになります。一方、ニュージーランド、アメリカのカリフォルニア州やオーストラリアや南アフリカなどでは、完熟した果実の甘さが前面に出たジューシーなスタイルとなります。そして、シャンパーニュに代表される最高級のスパークリング・ワインの主要品種としても有名です。

●ワインの印象

外観
明るめのチェリーレッド
〇香り
チェリー、イチゴ、ラズベレーなどの赤い小さな果実、紅茶、枯葉
味わい
酸味が強め、タンニンによる渋みが少なく上品で繊細

代表的な産地の栽培面積

①フランス31,600ha
②米国23,000ha
③ドイツ11,000ha
④ニュージーランド5,500ha
⑤イタリア5,000ha
⑥オーストラリア4,800ha

※栽培面積は、「which winegrape varieties are grown where?」University of Adelaide Press by Kim Anderson and Signe Nelgen (2020)306pより

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