シャンパーニュ地方ブドウ畑

17世紀、18世紀、19世紀、20世紀のシャンパン・・・シャンパンのそうだったのか!⑦

 2015年7月、シャンパーニュがユネスコ無形文化遺産に指定された際に、シャンパーニュ景観協会会長、ピエール・シュヴァル氏が次のように述べています。
振り返れば、18世紀はシャンパーニュの生まれた世紀19世紀は産業革命によりシャンパーニュが世界的に認知され広まった世紀、20世紀はそれが大衆化した世紀だった。」

 現在のシャンパンは、精妙に二次発酵で造られたワインですが、17世紀末にその起源を発します。
17世紀まではワインが自然に発泡するタイプでしたが、今日までの350年間あまりの間に、ブドウ栽培の工夫、ワイン製造上の技術革新・工業化、メゾンの創立、多岐に亘る販売促進など様々な側面からの発展が生産者側からあり、現在のような人工的に造られる精妙なスパークリングワインが誕生しました。
そして、消費者も当初の宮廷貴族からブルジョアに、そして民衆・大衆へと裾野を広げてきました。

 その歴史をこれから各回で見てゆきますが、この回では大まかな流れを辿ってゆきます。

〇17世紀

 シャンパーニュ地方のワインは古来赤ワインが中心でしたが、これが発泡性ワインに変わっていったのは17世紀末からです。
その発泡性ワインも「自然発泡」のワインでした。
 そして、その自然発泡ワインの流行の先駆けはフランスではなく17世紀後半の英国でした。程なくした世紀をまたぐ時期にドン・ピエール・ペリニョンのものが英国で人気を博しました。
この先駆者は、ワインの発泡性自体を発見したわけではありませんでしたが、今日の高品質な発泡性ワインが造るための道を開きました。

〇18世紀

 ルイ14世(在位:1643年~1715年)は終生シャンパーニュのワインを飲んでいました。
そして、その後のルイ15世の時代(在位:1715年~1774年)に発泡性ワインの需要が喚起されました。
従兄弟のオルレアン公フィリップの摂政職時代、及びその後の女権時代を通じて、発泡性ワインはヨーロッパの宮廷での中心ワインになりました。
この需要に応じて次々とシャンパンメゾンが設立されました。

 しかし、ルイ16世の時代(在位:1774年 ~ 1792年)からフランス革命(1789年)を経て、19世紀に入るまでは低迷の時代が続きました。

〇19世紀

 19世紀に入ると、発展の時がやってきます。ナポレオン1世の時代(在位:1804年~1814年)からです。
19世紀の前半になってようやく、シャンパンが「自然発泡」から抜け出し、知恵と工夫による「人工的な発泡」のワインに転換できるようになってきました。数々の技術的発展がもたらしました。
長年の課題であったボトルの爆発問題をはじめとした課題に対しシャンパンの技術革新が次々と起こったのです。

 そして、さらにナポレオン3世の時代(1852年12月~1871年)には蒸気機関を利用することで、効率的で大規模な機械化が進展しました。
さらに鉄道網の拡大が手近で新しい市場をもたらしました。

〇20世紀

 二度の大戦ではシャンパーニュ地方は甚大な被害を被り、住民も地域も経済も壊滅的状態に陥りました。とりわけ第一次世界大戦(1914~1918年)では村やブドウ畑は爆弾、毒ガスなどによって壊滅状態に追い込まれ、住民たちはこぞって地下のカーヴで生活しました。

 そして、他の地域より遅れてきたフィロキセラが追い打ちを掛けるようにシャンパーニュを襲い、大戦が終了した時点で残っているブドウ樹はほんの僅かで、根こそぎ引き抜き、アメリカ産の台木で植え直さなければならない状況に至っていました。
さらに、ロシア革命(1917年)、アメリカでの禁酒法(1920~1933年)、大恐慌(1929年)が始まり、シャンパーニュ地方も不況に陥ったのです。
 その間、安価なブドウの流入によりブドウ栽培者とメゾンの関係も悪化し、オーブ・マルヌ両地域の不和によるブドウ栽培者の暴動も起こりました。

 しかし、第一次世界大戦からの教訓を生かし、ブドウ栽培農家とネゴシアンの両者が理性を持って協調してシャンパン事業にあたるために後のシャンパーニュ委員会(※)に繋がる組織が設立されました。これにより、シャンパン事業は現在に至るまでの成長の軌跡を描いてきたのです。

 記録によれば、シャンパンの販売本数は、1720年代には3万本(輸出のみ)、1800年代初めには60万本1844年には663万本1800年代終わりには6000万本と増加し、現在では3億本を超えるほどになっています。

(※シャンパーニュ委員会)
・16,200のブドウ栽培者、
・130の協同組合、
・370のシャンパーニュメゾン
・シャンパーニュメゾンの出荷量は全体の7割


 このように、冒頭の言い方を別の言い方に置き換えると、
○17世紀は、赤ワインが発泡性ワインに変わっていく起源の世紀。
○18世紀は、発泡性ワインがヨーロッパの宮廷で中心ワインになった世紀。
○19世紀は、効率的で大規模な機械化が進展し、鉄道網の拡大により新しい市場が拡大した世紀。
○20世紀は、第一次世界大戦、フィロキセラ、経済不況、暴動を乗り越えて成長の軌跡を描いてきた世紀
とも言えるでしょう。

 以下に17~20世紀の主な出来事をまとめてみましたので、記載します。
これらについては次回以降、それぞれ区切って「そうだったのか!」を記載します。
参考にして下さい。

17~20世紀 年表(主なもの)
17~20世紀 年表(主なもの)
シャンパーニュ地方ブドウ畑
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